2010年度・授業計画

<内容>

(1)京都大学文学研究科・キリスト教学
(2)大谷大学(キリスト教学1・2。大谷大学ホームページからシラバス・ページへ)
(3)龍谷大学(キリスト教神学、聖書研究。龍谷大学ホームページからシラバス・ページへ)



(1)京都大学文学研究科・キリスト教学

A.特殊講義 
1.キリスト教と社会思想の諸問題(1)(共通・通年、火3)

<授業の概要・目的>
 現代世界において宗教は、しばしば深刻な対立要因の一つと見なされている。この対立図式自体の問題性は別にしても、キリスト教がまさにこうした文脈で問われていることは否定できない。そこで、講義では、キリスト教と社会理論との関係という視点から、この問題領域にアプローチしたい。

<授業計画と内容>
 「キリスト教と社会理論の諸問題」というテーマをめぐっては、今年度から始めて、今後5年程度をかけ、体系的な議論を展開することを予定しているが、今年度は、このテーマの方法論的基礎あるいは前提に属する諸問題が論じられる。
 方法論に属する問題としては、宗教言語論(隠喩・モデル)、解釈学、コミュニケーション論、システム論などが、扱われる。宗教の概念規定や、宗教と文化との関係論は、ここで、論じられる。
 以上が、本年度の講義内容の中心となるが、時間が許す範囲で、このテーマをキリスト教思想として論じる際のもう一つの前提である、聖書の社会思想(民族、政治、経済、法など)についても、基本的な考察を行いたい。

2.キリスト教思想研究入門(学部・通年、水3)
<授業の概要・目的>
 この特殊講義は、すでに系共通科目「キリスト教学講義」を受講し、キリスト教思想研究に関心のある学部生を対象にしている。キリスト教思想研究を目指す際に身につけておくべき事柄について、またいかなるテーマをどのように取り上げるのかについて、具体的なテーマに即して解説を行う。

<授業計画と内容>
 
本講義では、前期後期ともに、まず、10回程度の講義を行い、残り5回の授業において、受講者の研究発表を実施する。キリスト教学専修学部生(研究生も含めて)に対しては、この研究発表によって、卒論指導を行う。
 今年度の前期のテーマは、古代キリスト教思想研究である。キリスト教の誕生と制度化(初期キリスト教)、初期カトリシズム、ヘレニズム世界のユダヤ教、グノーシス主義、キリスト教教父、基本教理の形成、ローマ帝国国教化などについて、現在の研究状況を概説する。
 後期のテーマは、中世キリスト教思想(宗教改革を含む)である。西方キリスト教会のゲルマン民族への浸透、修道制の展開、スコラ的文化総合、自然神学、都市の発展と十字軍、12世紀ルネサンスなどについて、講義を行う。


  
B.演習
1.日本・アジアのキリスト教-波多野精一(3)-(共通・通年、水4)
<授業の概要・目的>
 波多野精一は近代日本を代表するキリスト教思想家であるが、この演習では、『宗教哲学』(1935年)を精読することを通して、波多野の宗教思想についての理解を深め、キリスト教的宗教哲学の可能性について考える。

<授業計画と内容>
 日本・アジアのキリスト教の歴史を振り返りつつ、その新しい思想的可能性を探ることは、日本におけるキリスト教思想研究にとって重要な意味を有している。本年度は、昨年度(『宗教哲学序論』)に引き続き、波多野精一の宗教思想を取り上げる。波多野宗教哲学の内容に関わる文献、つまり、波多野宗教哲学三部作の内、『宗教哲学』(1935年)に取り組むことが演習の目標になる。本年度は、トレルチ、ティリッヒ、ヒックらの宗教哲学と比較対照することによって、波多野の宗教哲学を、20世紀のキリスト教思想の文脈に位置づけることを試みたい。授業では、日本キリスト教思想において波多野に関連した諸問題、あるいは波多野についての諸研究についても、留意しつつ、テキストの厳密な読解が試みられる。
   『波多野精一全集』第四巻(岩波書店)


2.宗教と科学の関係論構築に向けて―ヒック(2)― (大学院・前期、木5)
<授業の概要・目的>
 「宗教と科学」の関係論は、現代キリスト教思想研究の中心的テーマの一つである。本年度は、昨年度に続いて、ジョン・ヒックのテキストを精読することを通して、「宗教と科学」の関係論についての考察を深めたい。

<授業計画と内容>
 ヒックは、宗教的多元主義の代表者として著名な思想家であり、本演習テキストでも、その第一部と第三部は、これまでのヒックの宗教論・宗教哲学で問題とされてきたテーマを取り扱っている。本演習では、昨年度の演習内容(第一部と第三部)を確認した上で、「脳神経科学」「心脳問題」などを扱った第二部を精読したい。
 ヒックの宗教思想、あるいは現代キリスト教思想全般を理解するに必要となる関連事項については、随時補足説明を行う予定である。また、参加メンバー自身の問題意識に基づく研究発表の機会も設けたい。
 John Hick, The New Frontier of Religion and Science. Religious Experience, Neuroscience and the Transcendent, Palgrave   
     Macmillan, 2006.
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3.新約聖書とその思想─政治思想の観点より─(共通・後期、木5)
<授業の概要・目的>
 新約聖書は、キリスト教思想の基盤であり、キリスト教思想研究を志す者には、聖書原典を読む能力(語学・聖書学・聖書神学など)が求められる。本演習ではギリシャ語原典の講読を通して現代聖書学の基礎の習得を目指す。

<授業計画と内容>
 本年度は、多岐にわたる新約聖書の思想の内から、政治思想に関わるテキストを講読する。特に、パウロ書簡(ローマの信徒への手紙)を中心に、聖書テキストに即して思想へと迫ることを試みたい。本演習では、各種の辞書の使用法から、聖書注解書の扱い方といった、聖書テキストを読解する上で必要となる基礎的作業の習熟を目指す。
 また、パウロの政治思想の理解を深めるために、Jacob Taubes, Die politische Theologie des Paulus, Wilhelm Fink Verlag, 1993.の講読を並行して行う予定である。受講者には、ギリシャ語原典の読解のほかに、このドイツ語テキストの読解が求められる。 

C.キリスト教学講義(学部・通年、木1)
   キリスト教学の主要問題について基本的な内容を概説する。

<授業の概要・目的>
 キリスト教学の主要問題を概説することによって、キリスト教の本質に迫る。

<授業計画と内容>
 前期のテーマは、「宗教現象としてのキリスト教」であり、現代宗教学の諸方法を用いて行われるキリスト教研究について、その基礎的な内容(信仰、神・宗教経験、象徴)を体系的に論じる。その後、象徴論を宗教言語論に展開する共に、神話の問題を手がかりに、近代聖書学の諸問題について検討を行う。後期のテーマは、「キリスト教思想史の諸問題」であり、本年度は、「キリスト教と自然科学」の関係論という視点から、キリスト教思想史を概観する。聖書の思想(創造、自然、知恵、終末)を論じた後、古代から現代にいたるキリスト教思想史の概観を行う。最後に、生命、環境、情報といった現代の諸問題との関連において、キリスト教思想の現状と展望を示す。以上によって、キリスト教学がどのような学問分野であり、どんな研究を行っているかについて、基本的な理解が可能になるものと思われる。


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