2012年度・授業計画

<内容>

(1)京都大学文学研究科・キリスト教学
(2)大谷大学(キリスト教学1・2。大谷大学ホームページからシラバス・ページへ)
(3)龍谷大学(キリスト教神学、聖書研究。龍谷大学ホームページからシラバス・ページへ)



(1)京都大学文学研究科・キリスト教学

A.特殊講義 
1.キリスト教と社会思想の諸問題(3)(共通・通年、火5)

<授業の概要・目的>

 現代世界において宗教は、深刻な対立要因の一つと見なされている。この対立図式自体の問題性は
別にしても、キリスト教がこうした文脈で問われていることは否定できない。講義では、キリスト
教と社会理論との関係という視点から、この問題領域にアプローチしたい。

<授業計画と内容>

 本講義は、数年前より開始した「キリスト教と社会理論の諸問題」をテーマとした講義計画(今
後5年程度をかけ、体系的な議論を展開することを予定)に位置づけられるものであるが、今年度
は、昨年度の講義内容(近現代における宗教哲学の可能性についての考察、聖書学から社会科学へ
の接続の問題)を簡単に確認した上で進められる。前期の講義では、昨年度の議論において残され
ていた、聖書学から政治思想・政治哲学への展開について、イデオロギーとユートピアという問題
を中心に考察を行う(マルクス、マンハイム、ティリッヒ、リクールら)。後期の講義では、「経
済と環境」をめぐる諸問題が取り上げた後に、再度、宗教哲学構想を再考する予定である。
 以上が、本年度の講義内容の中心となるが、時間が許す範囲で、具体的な聖書テキストの解釈に
即した考察も行いたい。

2.キリスト教思想研究入門(学部・通年、水3)
<授業の概要・目的>
 この特殊講義は、すでに系共通科目「キリスト教学講義」を受講し、キリスト教思想研究に関心の
ある学部生を対象に行われる。キリスト教思想研究を目指す際に身につけておくべき事柄について、
またいかなるテーマをどのように取り上げるのかについて、解説を行う。

<授業計画と内容>
 
本講義では、前期後期ともに、まず、10回程度の講義を行い、残り5回の授業において、受講者
の研究発表を実施する。キリスト教学専修学部生(研究生も含めて)に対しては、この研究発表に
よって、卒論指導を行う。
 今年度は、近現代キリスト教思想の主要なテーマについて考察を行うことによって、現代のキリ
スト教思想の主要動向の理解をめざしたい。前期は、19世紀から20世紀前半のキリスト教思想から、
近代聖書学、自由主義神学(シュライアマハー、リッチュル、ハルナック、トレルチ)、キリスト
教社会主義・宗教社会主義、弁証法神学(バルト、ブルトマン)、ティリッヒなどを取り上げる。
 後期は、20世紀後半以降のキリスト教思想から、解釈学的神学(ポスト・ブルトマン、リクール、
ヴァッティモ)、政治神学(シュミット、モルトマン、アガンベン、ジジェク)、解放の神学(ラ
テン・アメリカの解放の神学、フェミニスト神学、黒人神学、民衆の神学、ピエリス)、科学論の
神学(パネンベルク、プロセス神学)、宗教の神学(ヒック)、エコロジー神学などを論じる。

  
B.演習
1.日本・アジアのキリスト教-波多野精一(5)-(共通・通年、水4)
<授業の概要・目的>
日本・アジアのキリスト教の歴史を振り返りつつ、その新しい思想的可能性を探ることは、日本に
おけるキリスト教思想研究にとって重要な意味を有している。今年度取り上げられる波多野精一は
近代日本を代表するキリスト教思想家であるが、この演習では、『時と永遠』(1943年)を精読す
ることを通して、波多野の宗教思想についての理解を深め、キリスト教的宗教哲学の可能性につい
て考える。

<授業計画と内容>

 本年度は、昨年度まで完了した、波多野宗教哲学三部作(『宗教哲学』『宗教哲学序論』『時と永
遠』)それぞれの個別的な内容から、波多野宗教哲学の体系的理解へと考察が進められる。宗教哲
学の方法論、体系構成、事実・経験概念、哲学的人間学、宗教類型論といった宗教哲学の基礎に関
わる事項、あるいは、神秘主義と擬人観、愛、死、象徴、他者、永遠、創造、救済などの個々のテ
ーマとについて、三部作を縦横に用いた分析を行いたい。それによって、波多野宗教哲学を、トレ
ルチ、ハイデッガー、ティリッヒ、レヴィナス、西田幾多郞らとの本格的な比較が可能になるもの
と思われる。合わせて、これまでの演習で扱えなかった文献(「西洋宗教思想史(希臘の巻)」)
についても精読を行いたい。演習は、テキストの精密な読解に基づいて、関連事項について考察し、
波多野研究を参照しつつ進められる。

2.宗教と科学の関係論構築に向けて―キリスト教と環境論(2)― (大学院、金5)
<授業の概要・目的>
「宗教と科学」の関係を現代世界の新しい問題連関において解明することは、現代キリスト教思想
研究の中心的テーマの一つに他ならない。本年度は、こうしたキリスト教思想研究の動向について、
「キリスト教と環境論」(キリスト教的環境論あるいは環境神学)の観点から、アプローチしたい。
使用するのは、昨年度に続き、Dieter T. Hessel and Rosemary Radford Ruether(eds.), Christianity and
Ecology, Harvard University Press, 2000.である。この論集は、キリスト教と環境論という多面的で錯
綜したテーマの全体を論じた大部のものであるが、本年度は、第三部以降の諸論文を取り上げ、精
読してみたい。この演習を通じて、キリスト教思想の現代の動向について、理解を深めることが出
来るであろう。

<授業計画と内容>
 初回のオリエンテーションは、テキストの概要の紹介、「キリスト教と環境論」というテーマの説
明、そして担当分担などの演習の進め方の詳細を確認する。毎回の授業では、まず担当者が、担当
箇所のレジメを準備し、それに基づいて内容の説明あるいは問題提起を行い、続いて、参加者全員
で、内容などをめぐり討論する。また、必要に応じて、必要事項の講義や、受講者の研究発表も実
施する。

3.新約聖書とその思想─政治思想の観点より(3)─(共通・後期、金4)
<授業の概要・目的>
 新約聖書は、キリスト教思想の基盤であり、キリスト教思想研究を志す者には、聖書原典を読む能
力(語学・聖書学・聖書神学など)が求められる。本演習ではギリシャ語原典の講読を通して現代
聖書学の基礎の習得を目指す。

<授業計画と内容>
 本年度は、多岐にわたる新約聖書の思想の内から、昨年度に引き続き、政治思想に関わるテキス
トを講読する。特に、使徒言行録とヨハネ黙示録を中心に、聖書テキストに即して思想へと迫るこ
とを試みたい。本演習では、各種の辞書の使用法から、聖書注解書の扱い方といった、聖書テキス
トを読解する上で必要となる基礎的作業の習熟を目指す。
 また、新約聖書の政治思想の理解を深めるために、Richard A. Horsley(ed.),Paul and the Roman
Imperial Order,Trinity Press, 2004.の講読を並行して行う予定である。受講者には、ギリシャ語原典の
読解のほかに、このテキストの読解が求められる。

C.キリスト教学講義(学部・通年、木1)
   キリスト教学の主要問題について基本的な内容を概説する。

<授業の概要・目的>
 キリスト教学の主要問題を概説することによって、キリスト教研究の概要を理解し、キリスト教の
本質に迫る。

<授業計画と内容>
 前期のテーマは、「宗教現象としてのキリスト教」であり、現代宗教学の諸方法を用いて行われ
るキリスト教研究について、その基礎的な内容(信仰、神・宗教経験、象徴)を体系的に論じる。
その後、神話論に基づく比較宗教学や儀礼論、宗教心理学を通したキリスト教研究へと進む予定で
ある。
 後期のテーマは、「キリスト教思想史の諸問題」である。本年度は、キリスト教思想史の諸問題
の中より、平和思想と取り上げる予定であるが、その前提となる聖書の思想やキリスト教史の内容
についても、必要な範囲で、詳しい解説が行われる。
 講義は一回に一つのテーマを扱う仕方で進められる。
 


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