2013年度・授業計画

<内容>

(1)京都大学文学研究科・キリスト教学
(2)大谷大学(キリスト教学1・2。大谷大学ホームページからシラバス・ページへ)
(3)龍谷大学(キリスト教神学、聖書研究。龍谷大学ホームページからシラバス・ページへ)



(1)京都大学文学研究科・キリスト教学

A.特殊講義 
1.キリスト教思想の新しい展開──自然・環境・経済・聖書(1)(共通・通年、火5)

<授業の概要・目的>

 現代世界において宗教は、深刻な対立要因の一つと見なされている。この対立図式自体の問題性は
別にしても、キリスト教がこうした文脈で問われていることは否定できない。本講義では、こうしたキリスト
教思想を取り巻く思想状況を念頭に置きながら、キリスト教思想の新なる展開の可能性について議論を
行いたい。扱われる問題圏は、自然・環境・経済・聖書で構成されるものである。

<授業計画と内容>
 
本年度は、「キリスト教思想の新しい展開──自然・環境・経済・聖書──」という新しいテーマを設定
するにあたって、まず、問題の明確化と概要の提示を試みる。自然・環境・経済・聖書というテーマの構成
要素に即して言えば、次のようになる。
 まず自然から言えば、ここではキリスト教と自然科学(科学技術)の問題とそれを論じる基礎論としての
刷新された自然神学が問題になる。そして、この自然神学は環境と経済という問題連関において具体化さ
れ、その際に自然神学は従来の自然科学との連関から拡張されることになる。その拡張を可能にする基
盤となるのが、聖書とそれに関わる現代聖書学の新しい展開なのである。
 前期は、ティリッヒ、マクグラス、カブらを参照しつつ、以上の前半部分を扱い、後期は、リクール、マクフ
ェイグ、クロッサン、ホースリーらを参照しつつ、以上の後半が論じられる。

2.キリスト教思想研究入門(学部・通年、水3)
<授業の概要・目的>
 この特殊講義は、すでに系共通科目「キリスト教学講義」を受講し、キリスト教思想研究に関心のある学
部生、あるいはキリスト教研究の基礎の習得をめざす大学院生を対象に行われる。キリスト教思想研究を
目指す際に身につけておくべき事柄について、またいかなるテーマをどのように取り上げるのかについて、
解説を行う。

<授業計画と内容>
 
今年度前期は、「キリスト教と宗教哲学」という研究テーマについて、主要な問題や思想家を取り上げる
ことによって説明が行われる。主要な問題としては、伝統的な理性と啓示、悪と神義論、予定と自由意志、
形而上学と神などを挙げることができるが、主に近代以降の問題状況が中心になる。シュライアマハー、ト
レルチ、ホワイトヘッド、ティリッヒ、ブーバー、波多野精一、西谷啓治、リクールらを取り上げる予定である。
 後期は、「アジアのキリスト教思想」という研究テーマについて、多様な文脈を整理しつつ、検討が行われ
る。日本では、植村正久、海老名弾正、内村鑑三、賀川豊彦など、韓国では、土着化神学、民衆の神学、
中国・台湾では、宋泉盛、Pan-Chu Lai、インドでは、Aloysius Pierisなどの思想を紹介し、アジアのキリスト
教思想研究の可能性を探りたい。
 受講者には、前期と後期に、一回ずつの研究発表が求められる(キリスト教学学部生には原則的に発表
が求められる。ほかの者はレポートに代えることも可能)。成績評価は、この研究発表によって総合的に行
う。

  
B.演習
1.日本・アジアのキリスト教-無教会キリスト教の系譜(1)-(共通・通年、水4)
<授業の概要・目的>
日本・アジアのキリスト教の歴史を振り返りつつ、その新しい思想的可能性を探ることは、日本におけるキ
リスト教思想研究にとって重要な意味を有している。この演習では、今年度以降、無教会キリスト教の思
想家たちを順次検討してゆくことによって、近代キリスト教思想の重要な局面の解明がめざされる。今年度
は無教会キリスト教の創始者である内村鑑三を取り上げる。特に内村の中心的思想である非戦論につい
て、その基本的テキストを精読したい。

<授業計画と内容>

 本年度は、内村鑑三の中心思想のうち、特に非戦論に焦点をあわせつつ、内村のキリスト教思想の特
徴とその意義について議論を行いたい。その際に、内村を、キリスト教思想史における戦争・平和論(絶対
平和思想、正戦論、聖戦論の諸類型。19世紀以降の国民国家のなかでのキリスト教)の中に位置づける
と共に、内村以降の矢内原忠雄、南原繁、政池仁ら無教会第二世代への思想展開に留意する。そのた
めに、内村自身の基本テキストの精読とそれに基づく思想分析がなされ、あわせて、さまざまな参考文献
(内村についての欧米の研究文献を含めて)を参照しつつ、議論が行われる。
 具体的な演習の進め方については、初回のオリエンテーションで詳細が説明される。

2.キリスト教思想研究の現在(1)― (大学院、金5)
<授業の概要・目的>
 本演習は、おもに現代キリスト教思想(第一次世界大戦以降)を取り上げ、現在のキリスト教思想あるい
はキリスト教思想研究の動向について共同研究することを目指しています。
 現在、キリスト教思想そしてその研究は、現在複雑に細分化されいわば混沌とした様相を呈しており、
個々の研究者から見て見通しのつかない状況にあります。こうした思想状況において、注目すべき主要
な動向を明らかにし、新しいキリスト教思想研究の方向付けを行うというのが、本演習の最終目標になり
ます。いくつかの大づかみなテーマを設定し、演習参加者の研究発表を軸にしつつ、関連する諸思想家に
ついての思想紹介、新しい文献の書評なども組み合わせて、徐々に「キリスト教思想研究の現在」の全貌
に迫りたいと考えています。

<授業計画と内容>
 演習を構成する大テーマの設定は、初回のオリエンテーションで参加者の研究関心を踏まえて決定しま
す。演習の具体的な進め方は大テーマごとに相談しますが、参加者には、個人研究の発表が前期後期
一回程度(あるいは以上)求められます。前期と後期の最後に、大テーマ横断の発表会を行い、優れた発
表は、報告書などに掲載し公表します。

3.新約聖書とその思想─パウロ研究(1)─(共通・後期、金4)
<授業の概要・目的>
 新約聖書は、キリスト教思想の基盤であり、キリスト教思想研究を志す者には、聖書原典を読む能
力(語学・聖書学・聖書神学など)が求められる。本演習ではギリシャ語原典の講読を通して現代
聖書学の基礎の習得を目指す。

<授業計画と内容>
 本年度は、多岐にわたる新約聖書の思想の内から、パウロのローマの信徒への手紙を冒頭から
講読し、パウロのテキストに即しつつその思想の内実へと迫ることを試みたい。本演習では、各種の
辞書の使用法から、聖書注解書の扱い方といった、聖書テキストを読解する上で必要となる基礎的
作業の習熟を目指す。
 また、パウロの思想の理解を深めるために、Cranfieldの注解書(ICC)などを随時参照するともに、
Jacob Taubesの Die politische Theologie des Paulus (Wilhelm Fink, 1995)の講読を並行して行う
予定である。受講者には、ギリシャ語原典の読解のほかに、このテキストの読解が求められる。

4.キリスト教思想の基本文献を読む─(共通・前期、金4)
<授業の概要・目的>
 キリスト教思想を理解し、研究するには、その基本的な文献を広くまた深く読むことが必要である。
この演習では、近代以降のドイツ語による文献を精読することによって、キリスト教思想研究に必要
な文献読解力の向上をめざす。

<授業計画と内容>
 今年度は、ティリッヒの宗教哲学に関わる文献から、次のものを取り上げ、演習を行う。
 Paul Tillich, Religionsphilosophie, 1925. (Paul Tillich. MainWorks 4)

C.キリスト教学講義(学部・通年、木1)

   キリスト教学の主要問題について基本的な内容を概説する。

<授業の概要・目的>
 キリスト教学の主要問題を概説することによって、キリスト教研究の概要を理解し、キリスト教の
本質に迫る。

<授業計画と内容>
 前期のテーマは、「宗教現象としてのキリスト教」であり、現代宗教学の諸方法を用いて行われ
るキリスト教研究について、その基礎的な内容(信仰、神・宗教経験、象徴、宗教心理学)を体系
的に論じる。その後、近代聖書学から現代に至る聖書研究の展開を論じる予定である。
 後期のテーマは、「キリスト教思想史の諸問題」である。本年度は、キリスト教思想史の諸問題
の中より、「キリスト教と自然科学」関係史を取り上げる予定であるが、その前提となる聖書の思
想やキリスト教史の内容についても、必要な範囲で、詳しい解説が行われる。
 講義は一回に一つのテーマを扱う仕方で進められる。

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