2014年度・授業計画

<内容>

(1)京都大学文学研究科・キリスト教学
(2)大谷大学(キリスト教学1・2。大谷大学ホームページからシラバス・ページへ)
(3)龍谷大学(キリスト教神学A・B、聖書研究A・B。龍谷大学ホームページからシラバス・ページへ)



(1)京都大学文学研究科・キリスト教学

A.特殊講義 
1.キリスト教思想の新しい展開──自然・環境・経済・聖書(2)(共通・通年、火5)

<授業の概要・目的>

 現代世界において宗教は、深刻な対立要因の一つと見なされている。この対立図式自体の問題性は
別にしても、キリスト教がこうした文脈で問われていることは否定できない。本講義では、こうし
たキリスト教思想を取り巻く思想状況を念頭に置きながら、キリスト教思想の新なる展開の可能性
について議論を行いたい。扱われる問題圏は、自然・環境・経済・聖書で構成されるものである。

<授業計画と内容>
 
本年度は、昨年度の「キリスト教思想の新しい展開──自然・環境・経済・聖書──」というテ
ーマ設定の概観に続き、いくつかの角度から、議論の展開を試みる。
 前期は、「聖書解釈と政治思想」というテーマを取りあげる。政治思想は、自然神学を聖書解釈
を媒介にして社会科学に拡張する際のポイントの一つである(経済や環境と連関しつつ)。ティリ
ッヒ、モルトマン、マクフェイグなどのキリスト教思想家からリクール、アガンベン、ジジェクな
どの哲学者までが視野に入れられる。
 後期は、近代日本という歴史的状況におけるキリスト教思想をめぐる諸問題(植村正久、海老名
弾正、内村鑑三、波多野精一、矢内原忠雄など)を取りあげる。関において具体化され、その際に
自然神学は従来の自然科学との連関から拡張されることになる。特に研究の視点や方法という問
題に留意する。

2.キリスト教思想研究入門(学部・前期/後期、水3)
<授業の概要・目的>
 この特殊講義は、すでに系共通科目「キリスト教学講義」を受講し、キリスト教思想研究に関心のあ
る学部生、あるいはキリスト教研究の基礎の習得をめざす大学院生を対象に行われる。キリスト教思
想研究を目指す際に身につけておくべき事柄について、またいかなるテーマをどのように取り上げる
のかについて、解説を行う。

<授業計画と内容>
 
本年度前期のテーマは、「聖書と哲学」であり、創造、契約、堕罪、知恵、神の国、終末などの
諸問題、またアウグスティヌス、パスカル、カント、キルケゴール、ブーバー、リクールなどの哲学
者が取りあげられる。 
 本年度後期のテーマは「キリスト教思想、古代から中世・宗教改革」であり、講義は、初期キリ
スト教から古代教会の成立と展開、ゲルマン民族移動から中世キリスト教世界と宗教改革までの
範囲から、研究テーマを設定しつつ進められる。
 受講者には、前期と後期に、一回ずつの研究発表が求められる(キリスト教学学部生には原則的
に発表が求められる。ほかの者はレポートに代えることも可能)。成績評価は、この研究発表によっ
て総合的に行う。

  
B.演習
1.日本・アジアのキリスト教-無教会キリスト教の系譜(2)-(共通・通年、水4)
<授業の概要・目的>
 日本・アジアのキリスト教の歴史を振り返りつつ、その新しい思想的可能性を探ることは、日本に
おけるキリスト教思想研究にとって重要な意味を有している。この演習では、今年度以降、無教会
キリスト教の思想家たちを順次検討してゆくことによって、近代キリスト教思想の重要な局面の解
明がめざされる。今年度前期は、昨年に引き続き、無教会キリスト教の創始者である内村鑑三を取
り上げ、内村の中心的思想である非戦論について、その基本的テキストを精読する。後期からは、
内村の後継者の一人である矢内原忠雄を扱う。

<授業計画と内容>

 本年度前期は、内村鑑三の中心思想のうち、特に非戦論に焦点をあわせつつ、内村のキリスト教思
想の特徴とその意義について議論を行いたい。テキストは前年度のテキストの残りの部分が取り扱
われる。後期は内村の後継者の一人である矢内原忠雄の非戦論へと考察対象を広げたい。無教会キ
リスト教を、キリスト教思想史における戦争・平和論(絶対平和思想、正戦論、聖戦論の諸類型。
19世紀以降の国民国家のなかでのキリスト教)の中に位置づけると共に、内村以降の矢内原忠雄、
南原繁、政池仁ら無教会第二世代への思想展開に留意する。そのために、内村や矢内原の基本テキ
ストの精読とそれに基づく思想分析がなされ、あわせて、さまざまな参考文献(内村についての欧
米の研究文献を含めて)を参照しつつ、議論が行われる。
 具体的な演習の進め方については、初回のオリエンテーションで詳細が説明される。

2.キリスト教思想研究の現在(1)― (大学院・前期/後期、金5)
<授業の概要・目的>
 本演習は、おもに現代キリスト教思想(第一次世界大戦以降)を取り上げ、現在のキリスト教思想あるい
はキリスト教思想研究の動向について共同研究することを目指しています。
 現在、キリスト教思想そしてその研究は、現在複雑に細分化されいわば混沌とした様相を呈しており、
個々の研究者から見て見通しのつかない状況にあります。こうした思想状況において、注目すべき主要
な動向を明らかにし、新しいキリスト教思想研究の方向付けを行うというのが、本演習の最終目標になり
ます。いくつかの大づかみなテーマを設定し、演習参加者の研究発表を軸にしつつ、関連する諸思想家に
ついての思想紹介、新しい文献の書評なども組み合わせて、徐々に「キリスト教思想研究の現在」の全貌
に迫りたいと考えています。

<授業計画と内容>
 演習を構成する大テーマの設定は、初回のオリエンテーションで参加者の研究関心を踏まえて決定
します。演習の具体的な進め方は大テーマごとに相談しますが、参加者には、個人研究の発表が前
期後期一回程度(あるいは以上)求められます。前期最後に、大テーマ横断の発表会を行い、優れ
た発表は、報告書などに掲載し公表します。

3.新約聖書とその思想─パウロ研究(2)─(共通・後期、金4)
<授業の概要・目的>
 新約聖書は、キリスト教思想の基盤であり、キリスト教思想研究を志す者には、聖書原典を読む能
力(語学・聖書学・聖書神学など)が求められる。本演習ではギリシャ語原典の講読を通して現代
聖書学の基礎の習得を目指す。

<授業計画と内容>
 本年度は、昨年度に続き、多岐にわたる新約聖書の思想の内から、パウロのローマの信徒への手
紙の第2章を講読し、パウロのテキストに即しつつその思想の内実へと迫ることを試みたい。本演
習では、各種の辞書の使用法から、聖書注解書の扱い方といった、聖書テキストを読解する上で必
要となる基礎的作業の習熟を目指す。受講者には、パウロの思想の理解を深めるために、Cranfield
の注解書(ICC)などの注解書の参照が求められる。
 また、Daniel Patte and Cristina Grenholm編の Modern Interpretations of Romans,Bloomsbury, 2013
の第二章(Kurt Anders Richardson,"Schleiermacher and Romans)の講読を並行して行う予定である。

4.キリスト教思想の基本文献を読む─(共通・前期、金4)
<授業の概要・目的>
 キリスト教思想を理解し、研究するには、その基本的な文献を広くまた深く読むことが必要である。
この演習では、近代以降のドイツ語による文献を精読することによって、キリスト教思想研究に必要
な文献読解力の向上をめざす。

<授業計画と内容>
 今年度は、ティリッヒの宗教哲学に関わる文献から、次のものを取り上げ、演習を行う。
 Paul Tillich, Systematische Theologie. Band I, 1958. (Paul Tillich, Systematic Theology. Vol.1, 1951.
のドイツ語版)

C.キリスト教学講義(学部・前期/後期、木1)

   キリスト教学の主要問題について基本的な内容を概説する。

<前期授業の概要・目的>
 本講義は、キリスト教とはいかなる宗教であるのか、という問いに対して、現代宗教学の立場から
客観的に論じることを目標としている。本年度は、宗教現象としてのキリスト教の基本構造を現代
宗教学の諸方法(宗教現象学、宗教社会学など)によって解明し、その後、西洋文化と聖書の関わ
りを多様な角度から多面的に論じる。

<前期授業計画と内容>
 講義は、1回に1テーマのペースで進めます。
オリエンテーション+序論:キリスト教とアジア
第1講:現代宗教学とは何か
第2講:宗教概念の諸問題
第3講:信仰と自己同一性
第4講:聖なるもの(1)─宗教類型論─
第5講:聖なるもの(2)─オットーとエリアーデ─
第6講:宗教的象徴
第7講:儀礼とサクラメント
第8講:聖書論─正典論・霊感節、近代聖書学─
第9講:聖書翻訳の意義
第10講:告白文学の成立
第11講:教会建築のコスモロジー
第12講:死と死後の世界
第13講:近代西欧文学とキリスト教
第14講:まとめ─近代日本文学と聖書
試験

<後期授業の概要・目的>
 現代世界における宗教を論じる場合、グローバル化と多元化という二つの動向は決定的な意義
を持っている。この講義では、キリスト教思想の新しい動向を、現代世界が直面する多様な諸問題
との関わりで学ぶことを目標とする。そのために、キリスト教の思想的源泉である聖書とキリスト教
史とを参照しつつ、問題の核心に迫りたい。

<後期授業計画と内容>
 授業は、1回に1テーマのペースで進められる。
オリエンテーション+序論:キリスト教思想を学ぶ意義
第1講:聖書の世界(1)─創造と契約─
第2講:聖書の世界(2)─罪と悪─
第3講:聖書の世界(3)─救済と終末─
第4講:キリスト教と社会(1)─男と女─
第5講:キリスト教と社会(2)─家族─
第6講:キリスト教と社会(3)─市民社会─
第7講:キリスト教と社会(4)─民族─
第8講:キリスト教と社会(5)─グルーバル化・多元化─
第9講:キリスト教と社会(6)─近代/ポスト近代とキリスト教─
第10講:キリスト教と現代の倫理的問題(1)─生命倫理─
第11講:キリスト教と現代の倫理的問題(2)─環境倫理─
第12講:キリスト教と現代の倫理的問題(3)─情報倫理─
第13講:キリスト教と現代の倫理的問題(5)─戦争と平和─
第14講:キリスト教と現代の倫理的問題(6)─まとめ─
試験

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