2015年度・授業計画

<内容>

(1)京都大学文学研究科・キリスト教学
(2)大谷大学(キリスト教学1・2。大谷大学ホームページからシラバス・ページへ)
(3)龍谷大学(キリスト教神学A・B、聖書研究A・B。龍谷大学ホームページからシラバス・ページへ)
(4)東京大学(集中講義:自然神学と「科学─宗教」対話論)


(1)京都大学文学研究科・キリスト教学

A.特殊講義 
1.キリスト教思想の新しい展開──自然・環境・経済・聖書(3)(4)
   (共通・前期/後期、火2)

<授業の概要・目的>

 現代世界において宗教は、深刻な対立要因の一つと見なされている。この対立図式自体の問題
性は別にしても、キリスト教がこうした文脈で問われていることは否定できない。本講義では、こうし
たキリスト教思想を取り巻く思想状況を念頭に置きながら、キリスト教思想の新なる展開の可能性
について議論を行いたい。扱われる問題圏は、自然・環境・経済・聖書で構成されるものである。
 取り上げられる問題は、自然神学、聖書学から日本キリスト教思想までキリスト教学の全般に及
ぶが、2015年度前期は、日本キリスト教思想史における無教会キリスト教から宗教哲学形成までを
辿る。後期は、自然神学の歴史的展開を辿り、社会科学への拡張を具体的に論じる。こうした連関
から、現代の科学技術の諸問題にも言及する。

<授業計画と内容>
・前期:キリスト教思想の新しい展開──自然・環境・経済・聖書(3)──

第一回目のオリエンテーションに続き、以下の順番で講義は進められるが、授業は、一回につきほ
ぼ一つの項目を講義するペースで行われる。
1.オリエンテーション、導入
2.問題と方法(昨年度後期講義の確認)
3.海老名弾正と植村正久
4.無教会キリスト教とその意義
5.内村鑑三の日本的キリスト教
6.内村鑑三の非戦論
7.矢内原忠雄と科学技術論
8.弁証神学から宗教学・宗教哲学へ
9.波多野宗教哲学の挑戦
10.波多野宗教哲学の射程
11.他者論──波多野、レヴィナス
12.象徴論──波多野、ティリッヒ
13.日本キリスト思想研究の課題と可能性
14.Exkurs1
15.Exkurs2
16.フィードバック 

・後期:キリスト教思想の新しい展開──自然・環境・経済・聖書(4)──   
第一回目のオリエンテーションに続き、以下の順番で講義は進められるが、授業は、一回につきほ
ぼ一つの項目を講義するペースで行われる。
1.オリエンテーション、導入
2.自然神学とは何か
3.自然神学とキリスト教思想(弁証と論争)の形成
4.自然神学と自然学・自然科学
5.自然神学の古典的な諸問題
6.自然神学の拡張と聖書
7.聖書の社会教説
8.聖書の経済・環境思想
9.聖書の政治思想
10.自然神学から社会科学へ
11.キリスト教思想と科学技術
12.キリスト教思想と生命
13.キリスト教思想と脳科学
14.Exkurs1
15.Exkurs2
16.フィードバック

2.キリスト教思想研究入門(学部・前期/後期、水3)
<授業の概要・目的>
 この特殊講義は、すでに系共通科目「キリスト教学講義」を受講し、キリスト教思想研究に関心のあ
る学部生、あるいはキリスト教研究の基礎の習得をめざす大学院生を対象に行われる。キリスト教思
想研究を目指す際に身につけておくべき事柄について、またいかなるテーマをどのように取り上げる
のかについて、解説を行う。

<授業計画と内容>
・前期:キリスト教思想研究入門A
本年度前期のテーマは、「聖書学・聖書の思想」である。初回のオリエンテーションに続いて、次
のような項目について、講義が進められる。一回の講義で一つの項目が取り上げられる。
1.オリエンテーション、導入──聖書と聖書学・考古学
2.旧約聖書1──宗教史的背景
3.旧約聖書2──創造
4.旧約聖書3──契約
5.旧約聖書4──王権
6.旧約聖書5──預言
7.旧約聖書6──知恵
8.新約聖書1──新約聖書学
9.新約聖書2──神の国
10.新約聖書3──イエスの譬え
11.新約聖書4──富
12.新約聖書5──国家
13.新約聖書6──グノーシス
14.受講者による研究発表1
15.受講者による研究発表2
16.フィードバック

・後期:キリスト教思想研究入門B
本年度後期のテーマは、「近代キリスト教思想」である。初回のオリエンテーションに続いて、次
のような項目について、講義が進められる。一回の講義で一つの項目が取り上げられる。
1.オリエンテーション、導入──近代キリスト教の歴史的状況
2.宗教改革の思想的意義
3.プロテスタント正統主義、敬虔主義、啓蒙主義
4.17世紀イギリスの思想状況
5.理神論、千年王国論
6.近代聖書学と歴史的精神
7.ドイツ古典的哲学の宗教論
8.シュライエルマッハー
9.宗教批判の系譜1──フォイエルバッハ
10.リッチュルと自由主義神学
11.宗教批判の系譜2──マルクス
12.キルケゴールと実存主義
13.トレルチと宗教史学派
14.受講者による研究発表1
15.受講者による研究発表2
16.フィードバック
  

B.演習
1.日本・アジアのキリスト教-無教会キリスト教の系譜(3)(4)-
   (共通・前期/後期、水4)
<授業の概要・目的>
 日本・アジアのキリスト教の歴史を振り返りつつ、その新しい思想的可能性を探ることは、日本に
おけるキリスト教思想研究にとって重要な意味を有している。この演習では、今年度以降、無教会
キリスト教の思想家たちを順次検討してゆくことによって、近代キリスト教思想の重要な局面の解
明がめざされる。今年度前期は、昨年に引き続き、無教会キリスト教の創始者である内村鑑三を取
り上げ、内村の中心的思想である非戦論について、その基本的テキストを精読する。後期からは、
内村の後継者の一人である矢内原忠雄を扱う。

<授業計画と内容>

 本年度前期は、内村鑑三の中心思想のうち、特に非戦論に焦点をあわせつつ、内村のキリスト教思
想の特徴とその意義について議論を行いたい。テキストは前年度のテキストの残りの部分が取り扱
われる。後期は内村の後継者の一人である矢内原忠雄の非戦論へと考察対象を広げたい。無教会キ
リスト教を、キリスト教思想史における戦争・平和論(絶対平和思想、正戦論、聖戦論の諸類型。
19世紀以降の国民国家のなかでのキリスト教)の中に位置づけると共に、内村以降の矢内原忠雄、
南原繁、政池仁ら無教会第二世代への思想展開に留意する。そのために、内村や矢内原の基本テキ
ストの精読とそれに基づく思想分析がなされ、あわせて、さまざまな参考文献(内村についての欧
米の研究文献を含めて)を参照しつつ、議論が行われる。
 具体的な演習の進め方については、初回のオリエンテーションで詳細が説明される。

2.キリスト教思想研究の現在(1)― (大学院・前期/後期、金5)
<授業の概要・目的>
 日本・アジアのキリスト教の歴史を振り返りつつ、その新しい思想的可能性を探ることは、日本に
おけるキリスト教思想研究にとって重要な意味を有している。この演習では、年度や学期を超えて、
無教会キリスト教の思想家たちを順次検討してゆくことによって、近代キリスト教思想の重要な局
面の解明がめざされている。今年度前期は、昨年に引き続き、無教会キリスト教における内村鑑三
の後継者の一人である、矢内原忠雄のテキストを読み進める。後期は、昨年の内村鑑三、今年度
前期の矢内原忠雄に引き続き、矢内原とともに無教会キリスト教における内村鑑三の後継者の一
人である、南原繁のテキストを読み進める。
[
<授業計画と内容>
・前期:日本・アジアのキリスト教──無教会キリスト教の系譜(3)──
 初回の授業では、本演習のオリエンテーションを行い、演習の目的や進め方を確認する。
 二回目以降は、昨年度後期の演習で扱った、矢内原忠雄の『国家の理想──戦時評論集』
(岩波書店)の内、「自由と自由主義」「無教会主義論」「宗教改革論」「日本の基督者平民に告
ぐ」「民族と平和のために」「国家の理想」「前十年と後十年」「社会の理想」「基督教の主張と反
省」などの論考を、担当者の解説を通して、順番に精読してゆく。

・後期:日本・アジアのキリスト教──無教会キリスト教の系譜(4)──
 初回の授業では、本演習のオリエンテーションを行い、演習の目的や進め方を確認する。
 二回目以降は、南原繁『国家と宗教』(1942年)を冒頭から、担当者の解説を通して、順番に精
読してゆく。

3.新約聖書とその思想─パウロ研究(3)─(共通・後期、火4)
<授業の概要・目的>
 新約聖書は、キリスト教思想の基盤であり、キリスト教思想研究を志す者には、聖書原典を読む能
力(語学・聖書学・聖書神学など)が求められる。本演習ではギリシャ語原典の講読を通して現代
聖書学の基礎の習得を目指す。

<授業計画と内容>
 本年度は、昨年度に続き、多岐にわたる新約聖書の思想の内から、パウロのローマの信徒への手
紙の第3章を講読し、パウロのテキストに即しつつその思想の内実へと迫ることを試みたい。本演
習では、各種の辞書の使用法から、聖書注解書の扱い方といった、聖書テキストを読解する上で必
要となる基礎的作業の習熟を目指す。受講者には、パウロの思想の理解を深めるために、Cranfield
の注解書(ICC)などの注解書の参照が求められる。
 また、Daniel Patte and Cristina Grenholm編の Modern Interpretations of Romans,Bloomsbury, 2013
の第三章(Carsten Claussen,"Albert Schweitzer's Understanding of Righteousness by Faith according
to Paul's Letter to the Romans)の講読を並行して行う予定である。

4.キリスト教思想の基本文献を読む─(共通・前期、火4)

<授業の概要・目的>
 キリスト教思想を理解し、研究するには、その基本的な文献を広くまた深く読むことが必要である。
この演習では、近代以降のドイツ語による文献を精読することによって、キリスト教思想研究に必要
な文献読解力の向上をめざす。

<授業計画と内容>
 今年度は、ティリッヒのキリスト教思想に関わる文献から、次のものを取り上げ、演習を行う。
Paul Tillich, Dogmatik-Vorlesung (Dresden 1925-1927), Ergaenzungs- und Nachlassbaende zu den
Gesammelten Werken XIV, De Gruyter, 2005.
第1回:オリエンテーション(演習の目的、進め方などの説明)
第2回:ティリッヒ神学の概観(講義)と演習担当者の決定
第3~15回:担当者によるテキストの精読と討論

C.キリスト教学講義(学部・前期/後期、木1)

   キリスト教学の主要問題について基本的な内容を概説する。

<前期授業の概要・目的>
 本講義は、キリスト教とはいかなる宗教であるのか、という問いに対して、現代宗教学の立場から
客観的に論じることを目標としている。本年度は、宗教現象としてのキリスト教の基本構造を現代
宗教学の諸方法(宗教現象学、宗教社会学など)によって解明し、神話論、儀礼論、祭論を含めた
現代宗教学の全体像を明らかにしたい。

<前期授業計画と内容>
 講義は、1回に1テーマのペースで進めます。最後(16回目)のフィードバックの仕方については、
授業中に説明します。
オリエンテーション+序論:キリスト教の現在─新宗教論の文脈から─
第1講:現代宗教学の意義
第2講:意味の問いから宗教へ
第3講:信仰─人格と自己同一性─
第4講:聖なるもの(1)─宗教類型論と人格神─
第5講:聖なるもの(2)─オットーとエリアーデ─
第6講:宗教的な象徴世界
第7講:宗教心理学─フロイトとユング─
第8講:神話学と比較宗教論
第9講:民族と神話─古代イスラエル民族─
第10講:一神教の系譜と神話改訂プロセス
第11講:聖書の神話構造
第12講:儀礼とサクラメント
第13講:まとめ─祭論─
試験
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<後期授業の概要・目的>
 現代世界における宗教を論じる場合、グローバル化と多元化という二つの動向は決定的な意義を持
っている。この講義では、キリスト教思想の新しい動向(特に平和思想)を、現代世界が直面する
多様な諸問題との関わりで学ぶことを目標とする。そのために、キリスト教の思想的源泉である聖
書とキリスト教史(アジアと日本のキリスト教史に留意する)とを参照しつつ、問題の核心に迫り
たい。

<後期授業計画と内容>
 授業は、1回に1テーマのペースで進められる。最後(16回目)のフィードバックの仕方について
は、授業中に説明します。
オリエンテーション+序論:キリスト教思想とは
第1講:聖書の世界
第2講:古代地中海世界におけるキリスト教
第3講:中世ヨーロッパとキリスト教
第4講:宗教改革から西欧近代へ
第5講:近代キリスト教と世界宣教の展開
第6講:東アジアの宗教状況
第7講:キリシタン時代とその影響
第8講:近代日本とキリスト教(1)─明治時代を中心に─
第9講:近代日本とキリスト教(2)─大正時代以降─
第10講:日本から世界へ、宗教的動向
第11講:近代/ポスト近代とキリスト教
第12講:平和思想の現在─キリスト教の視点から─
第13講:キリスト教と平和─無教会と非戦論─
第14講:まとめ、:宗教間対話と平和
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(4)東京大学(集中講義:自然神学と「科学─宗教」対話論)
<授業の目標・概要>
 自然神学(natural theology)は、啓示神学(revealed theology)と対をなす、キリスト教思想の伝統的なテーマである。一般に、啓示神学が神の啓示の書物である「聖書」を通した神認識であるのに対して、自然神学は神の被造物(作品)としての「自然」を通した、あるいは人間の自然の理性的能力による神認識と説明される(「二つの書物」説はその典型であり、また宇宙論的な神の存在論証は、自然神学の代表的な議論)。この意味における自然神学については、ローマ・カトリック教会とプロテスタント教会との対立を歴史的背景として、とくに、プロテスタント的立場のキリスト教思想家によってしばしば否定的な評価がなされてきた。特に20世紀のプロテスタント神学においては、1930年代のバルト(Karl Barth)とブルンナーの「自然神学論争」以来、しばしば自然神学は過去の問題として扱われてきた。しかし、こうした状況は、最近の自然神学をめぐる研究の進展に伴い、大きな修正をせまられている。
 本講義では、こうした新しい自然神学の動向に基づいて、自然神学の射程を社会科学へと拡張することが試みられる。そのために、自然神学の歴史的展開(古代から近代まで)を概観した上で、聖書学とキリスト教思想研究の新しい成果を参照することによって、聖書的思惟と政治・経済思想との関係の問い直しを行いたい。これは、自然神学をコミュニケーション合理性の問いとして再定義する作業である。また、「科学─宗教」対話論の具体例として、キリスト教思想における科学技術、生命・環境、脳科学をめぐる議論も取り上げたい。

<授業計画>
第一回目のオリエンテーションに続き、以下の順番で講義は進められるが、授業は、一回(一コマ)につき、ほぼ一つの項目を講義するペースで行われる(講義の進展を見て、一部を省略するかもしれない)。
1.オリエンテーション、導入
2.自然神学とは何か
3.自然神学とキリスト教思想(弁証と論争)の形成
4.自然神学と自然学・自然科学
5.自然神学の古典的な諸問題
6.自然神学とコミュニケーション合理性
7.自然神学の拡張と聖書
8.聖書の社会教説
9.聖書の経済・環境思想
10.聖書の政治思想
11.自然神学から社会科学へ
12. 「科学─宗教」関係論、対立から対話? 
13.キリスト教思想と科学技術
14.キリスト教思想と生命
15.キリスト教思想と脳科学


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