波多野精一(1877-1950)


A.人と思想

「ドイツ留学中に宗教史学派の原始キリスト教研究にふれ、明治41(1908)年に『基督教の起源』を著していた波多野精一(1877〜1950)が大正6(1917)年12月に宗教学講座に着任してから、初めて専任者によるキリスト教学の授業が行われることになった。このことは、文学部においてキリスト教研究の重要性が早くから認識されていたことを示している。このような背景で、キリスト教の学術的研究のため寄付された渡辺荘奨学資金により、大正11(1922)年5月本講座が宗教学第2講座として設置され、波多野がこの講座を兼担することになった。波多野は、原始キリスト教、パウロおよびヨハネの宗教思想、宗教思想史等について講じ、退官後発表された『時と永遠』(1943年)のような、キリスト教の立場に基づく宗教哲学をも構想しつつあった。波多野の厳密なテクスト読解と深い宗教哲学的思索とが、本講座の礎石を据えたといってよい。波多野は、昭和2 (1927)年、本講座の兼担を解かれて分担となったが、昭和12(1937)年3月には宗教学第1講座から本講座の担任者となり(第1講座を分担)、本講座は初めて専任教授を持つことになった。」(『京都大学百年史/部局史編1』第2章より)

B.略年譜

1896年:東京帝国大学文科大学入学
1899年:東京帝国大学文科大学卒業、大学院進学。
1900年:東京専門学校(後の早稲田大学)講師を委嘱。
1904年:東京帝国大学大学院修了。
    早稲田大学海外留学生としてドイツ留学(ベルリン大学、ハイデルベルク大学)。
1906年:早稲田大学文学科に教鞭を取る。
1907年:東京帝国大学文科大学講師を委嘱。
1909年:東京帝国大学大学院を卒業、文学博士の学位を受く。
1917年:京都大学教授就任(宗教学講座担任、12月4日)。
1922年:宗教学第一講座担任、第二講座兼任。
1927年:宗教学第二講座兼任を免ぜられ、同講座を分担。
1937年:宗教学第二講座担任、第一講座を分担(3月1日)。京都帝国大学教授を定年退官(7月31日)
1947年:玉川学園大学教授。

C.主要著作

1.『波多野精一全集』全6巻、岩波書店、1968-69。
  なお、これは、岩波旧版(全5巻、1949年刊行)とは内容的にずれがある。

 ・第1巻
  哲学概論、西洋哲学史要(1901)、スピノザ研究(1904年提出の大学院卒業論文の訳)

 ・第2巻
  基督教の起源(1908)、原始キリスト教、パウロの生涯、パウロ(1928)

 ・第3巻
  西洋宗教思想史(希臘の巻、1921)、宗教哲学の本質及其根本問題(1920)、宗教哲学序論(1940)、宗教学

 ・第4巻
  宗教哲学(1935)、時と永遠(1943)

 ・第5巻
  初期の論文、小論、序文

 ・第6巻
  書簡、総目次、年譜

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