水垣 渉(1935- )
A.人と思想
「武藤のもとで昭和50(1975)年助教授に任じられた水垣渉は、昭和52(1977)年停年退官した武藤の後を受けて昭和56(1981)年、教授となった。水垣は『宗教的探求の問題 古代キリスト教思想序説』(1984年)で、キリスト教思想の成立と形成の根本動機を「探求」に求め、ヘブライとギリシアの背景から教父思想に至るその発展を跡づけるとともに、さらに広くキリスト教思想史一般の解釈に及ぼそうとしている。」(『京都大学百年史/部局史編1』第2章より)
・オリゲネス、ユスティノスを中心とした古代ギリシャ教父の思想研究を中心に、聖書から宗教改革に至る
キリスト教思想の全般の研究。波多野、有賀が基礎を築いた教父思想研究の精密な展開。
・有賀が提唱したハヤトロギアの思想系譜を広範なキリスト教思想の中で追跡する作業。この関連で、研
究は、アウグスティヌスやルター、カルヴァンから、さらには、キルケゴール、ブーバーまでに及ぶ。また、
神の像や神の自己二重化などの、神論やキリスト論についての独自の思想構築が試みられている。
・現代キリスト教が直面する諸問題への考察。キリスト教と自然科学との関わりや、日本キリスト教の問題
状況まで。
B.略年譜
1953年:京都大学文学部入学。
1957年:京都大学文学部哲学科(基督教学専攻)卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程宗教学(基督教学)専攻進学。
1962年:京都大学大学院文学研究科博士後期課程宗教学(基督教学)専攻、単位取得退学(3月)。
京都大学文学部助手(7月)。
1966年:京都大学退職。京都産業大学専任講師。
1969年:京都産業大学退職。東京女子大学文理学部専任講師。
1970年:東京女子大学文理学部助教授昇任。
1975年:東京女子大学退職。京都大学文学部助教授就任。
1981年:京都大学文学部教授(哲学科宗教学第二講座=キリスト教学担任)。
1996年:大学院重点化に伴い、文学研究科に対置替え、文学部兼任。
1998年:京都大学定年退職、京都大学名誉教授。
2001年〜2005年:近畿福祉大学福祉学部教授。
2006年〜現在:日本基督教学会理事長。
C.主要著作
1.『宗教的探求の問題──古代キリスト教思想序説』創文社、1984年。
2.共編著 『キリスト論論争史』日本キリスト教団出版局、2003年。
3.『初期キリスト教とその霊性』日本キリスト改革派教会西部中会文書委員会、2008年。