片柳栄一(1944-   )


A.人と思想

「片柳教授の研究領域は、古代キリスト教思想を中心としたキリスト教思想全般についての宗教哲学的研究である。とりわけアウグスティヌス研究では、我が国のキリスト教思想研究をリードする第一人者として著名である。この分野における片柳教授の最も重要な業績は『初期アウグスティヌス哲学の形成』(平成7年、創文社)であり、それまで長年にわたり片柳教授が追求してきたアウグスティヌス研究の集大成と言える。本書では、若きアウグスティヌスの哲学思想形成が「知恵の探求」への決意として開始されたこと、また、マニ教、懐疑主義、そして新プラトン主義との折衝と対決の中で、その基盤が確立されたことが、最新の膨大なアウグスティヌス研究を参照しつつ、緻密なテキストの読解を通して解明された。このアウグスティヌス研究は、初期アウグスティヌス哲学が宗教的探求あるいは探求的信仰と有機的に結びついていることを説得的に示したものであり、アウグスティヌスにおける哲学と信仰との関係性という困難な問題の解明に重要な寄与を行ったものとして高く評価されている。なお、片柳教授はこの研究により、京都大学博士(文学)の称号を平成8年1月に受けている。
 片柳教授の研究は、古代のキリスト教思想研究を越えて、広範な領域に及んでいる。デカルトやカント、ヘーゲル、キルケゴールなどの近代哲学思想をはじめ、ハイデッガー、アーレント、レヴィナスらの現代哲学についても、その深い学識は多くの研究論文として公にされている。とりわけ、近年は、キリスト教と西田哲学との関わりに関して、本格的な研究を推し進めており、現代日本におけるキリスト教研究に多面的な影響を与えている。
 片柳教授は、京都大学21世紀COEプログラム「グローバル化時代の多元的人文学の拠点形成」の研究会リーダー、あるいは多くの研究コロキュウムや講演会の企画者として、その卓越した研究能力と指導力によって、京都大学の学生や若手研究者の育成にも優れた成果をあげた。また、学外にあっては平成18年10月より日本基督教学会学会誌編集委員長として学会の発展に指導的役割を果たしている。」

B.略年譜

1963年:京都大学文学部入学。
1967年:京都大学文学部哲学科(基督教学専攻)卒業、京都大学大学院文学研究科修士課程宗教学(基督教学)専攻進学。
1972年:京都大学大学院文学研究科博士後期課程宗教学(基督教学)専攻、単位取得退学(3月)。
      京都大学文学部研修員。
1973年:ドイツ、エアランゲン大学、ニュルンベルク大学へ留学。
1976年:関西学院大学商学部専任講師。
1987年:関西学院大学退職。神戸大学教養部助教授就任。
1989年:神戸大学教養部教授昇任(5月)。
1992年:神戸大学国際文化学部に配置換え(10月)。
1997年:神戸大学大学院総合人間科学研究科担当。
1998年:京都大学大学院文学研究科教授(キリスト教学講座担当、98年のみ神戸大学兼任)就任。
2006年(〜現在):日本基督教学会学会誌編集委員長。
2008年:京都大学退職。聖学院大学大学院アメリカ・ヨーロッパ文化学研究科教授就任。

C.主要著作

1.『初期アウグスティヌス哲学の形成』創文社、1995年。
2.編著 『ディアロゴス──手探りの中の対話』晃洋書房、2007年。

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