1.「宗教と科学」関係論の射程

 このデータベースは、「宗教と科学」関係論を研究する上で有用なデータの蓄積と共有を目的としている。
 ここで、問題となっている「宗教と科学」関係論とは、いかに説明するような、三つの問題群を包括するも
のとしてイメージいただきたい。

「近年、「宗教と科学」の関係をめぐる問題──キリスト教思想研究においては、本書を含め多くの場合、「宗教と科学」の関係は、主に「キリスト教と自然科学」の関係に限定して論じられている──については、数多くの研究者が様々な視点から積極的な議論を展開しており、今や現代キリスト教思想の中心テーマの一つであると言って過言ではない。

 大きく言って、議論は次の三つの問題群に区分できる(芦名(一九九九a、二三六─二四一頁)を参照)。第一の問題群は、宗教と科学との積極的な関係構築を目ざす理論的な取り組みであり、たとえば、両者の関係の基礎にある形而上学的問題や、両者を言語という観点から比較するといった議論は、この問題群に属していると言える。第二の問題群は、古代から現代に至る、宗教と科学との相互関係についての歴史的研究(思想史研究)であり、たとえば、宗教と科学の対立図式を支えてきた従来の通説への批判的な再検討が行われることによって、宗教と科学との新しい関係構築の歴史的基盤が明らかにされつつある。第三の問題群は、宗教と科学の双方に関わる倫理的な諸問題であり、本書でも取り上げる環境論は、その代表例である。こうした倫理的実践的な諸問題が緊急の課題として自覚されてきている点をぬきにしては、現在「宗教と科学」の関係をめぐる議論がこれほどまでに活発に行われていることは、理解できないであろう。本書では、こうした三つの問題群の内、第二と第三の問題群が主に取り扱われる。第一の問題群の詳細な議論は、別の機会に譲ることにしたい(なお、芦名(二〇〇四)(二〇〇五)(二〇〇六)を参照)。」(芦名定道『自然神学再考──近代世界とキリスト教』晃洋書房、2007年 5頁より)


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