研究紹介1(研究計画)    2004年度版
                               (2004/2/10)     
 
                          過去の計画
                        (2001年度2003年度

  以下、現時点における2004年度の研究計画を紹介したい。といっても、こうした研究計画は研究の進展に伴って変更されるものであるし、また、ここでの紹介は、基本的には、わたし自身研究の整理、つまり覚書き的なものであって、暫定的かつ概略的なものであることをお断りしておきたい。また、2004年度は2003年度とほぼ同じ枠組みで研究が進められるので、以下の区分は、2003年度のものを使用することにする。

 <内容>
  1.宗教と科学
  2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
  3.近現代のキリスト教思想
  4.その他

1.宗教と科学
 (1)京都大学における特殊講義および演習
 この講義と演習を準備することが、同時に「宗教と科学」研究の主要部分となる。
 ・特殊講義:キリスト教思想における自然の諸問題
     第一章 自然の宗教哲学の構想とティリッヒの次元論
                          (2002年度完了)
     第二章 宗教言語と科学言語   (2002年度完了)
     第三章 形而上学再考   (2003年度完了)
     第四章 精神と宗教     (2004年度講義予定)
  なお、第三章の内容は、2004年度中に論文化の予定である。
 ・演習:宗教と科学の新たな関係構築に向けて
     −A.E.マクグラス−
    Alister E. McGrath,
       The Foundations of Dialogue in Science & Religion,
                             Blackwell 1998
   このテキストの第3章から、可能ならば最後までを扱いたい。

 (2)現代キリスト教思想研究会(「宗教と科学」研究会)
 2003年度には、研究会メンバーによる共著『科学時代を生きる宗教−過去と現在、そして未来へ−』(北樹出版)が出版の運びとなった。故小倉和一氏を記念して4月の完成の見通しが立ち、会の代表者として肩の荷が下りた心境である。それによって、本研究会も2004年度から新しい仕方で再スタートするわけであるが、現時点では、(1)のマクグラス演習との有機的な連関の中で研究会を進めたいと考えている−マクグラスの演習は金曜日5限目であり、研究会はその後に接続するなど−。これは、本研究会の現状から見て、毎月の研究発表の企画が困難なこと、また京都大学文学部を取り巻く状況の変化から演習のあり方に工夫が必要なこととの二つの理由に基づくものである。

 (3)「近代科学の成立とキリスト教自然神学の生命論−エコロジーの視点から−」(科学研究費補助金・基盤研究(C)(2))は、2002年度〜2003年度の二年にわたり行われ、2004年3月には研究報告書が完成予定である。引き続き、科学研究費へ応募するとともに、そろそろ、これまでの研究を総括する段階にさしかかりつつことも意識して研究を進めたい。さしあたり、現代キリスト教思想における、生命論や環境論を中心に研究は進められる予定である。

 (4)宗教倫理学会の研究プロジェクト
 本年も3月より8月まで、月一回の研究会が予定されているが、2004年度は2003年度に引き続き生命倫理が焦点になる予定である。

2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
 (1)京都大学における演習(日本・アジアのキリスト教−植村・海老名論争を中心に−)
 2003年度の、海老名弾正『基督教本義』(1903)に続いて、この著書の背景となった植村・海老名論争(キリスト論論争)を扱う予定である(海老名弾正・植村正久『基督論集』 1902)。

 (2)COE研究プロジェクト「多元世界における寛容性についての研究」
 このプロジェクトは、これまで隔月の全体研究会と、個人および共同研究とが二つの軸になって進められきたが、2004年3月の中間報告書における総括を経て、2004年度からは研究の第2ステップへ進むことが予定されている。そのため研究会は新しいメンバーを加え、さらに活発な研究活動を予定している(ただし、全体研究会の頻度などは、これまで同様に隔月となるであろう)。新しい方向性としては、キリスト教研究の立場からの「宗教的寛容」の研究を強化すること(休会状態の「宗教的寛容」研究会の活性化)が挙げられるが、昨年に続き国際シンポジウムの開催を実現したい(韓国での開催を考えたい)。また、全体研究会では、宗教と公共性といった論点に焦点をしぼりつつ、「寛容」というテーマについて、キリスト教思想研究と社会学的アプローチのより緊密な関係構築を目指したい。個人的には、新しい研究状況を踏まえた宗教論の構築を期待している。

 (3)現代キリスト教思想研究会(「アジアと宗教的多元性」研究会)
 月一回の研究会と年度末の研究雑誌の発行が主な活動であるが、各参加メンバーの研究テーマに即して言えば、日本のキリスト教思想史(キリスト教思想と哲学、日韓キリスト教の関係史などを含む)を様々な角度から取り扱うことになるものと思われる。以上の点は、2003年度と基本的に同じであり、またこの研究会が、上記のCOE研究プロジェクトと密接な関わりにおいて進められることも同様である。ただし、本研究会では、2005年3月の第19回国際宗教学宗教史会議世界大会(東京大会)でパネル「東アジアの宗教と社会正義−日韓の無教会キリスト教を中心に−」を共同研究として行うことを予定しており、2004年度の活動はこの共同研究に向けたものとなるものと思われる。

 (4)研究発表・研究論文
 研究論文としては、現代キリスト教思想研究会関連の雑誌論文(2ないし3本)の他に、『基督教学研究』(京都大学基督教学会)への執筆を予定している。研究発表としては、企画中のシンポジウムやパネルでの発表が中心となるであろう。

3.近現代キリスト教思想研究
 (1)ティリッヒ研究−現代キリスト教思想研究会(「ティリッヒ」研究会)として−
 これまで、月一回の研究発表と、年2回の雑誌『ティリッヒ研究』の発行を中心に研究会を活動を続けてきたが、年2回の雑誌の発行が可能かは別にして、基本的に2004年度も同様の活動を継続する予定である。昨年度は研究会で共同翻訳を進めてきた、ティリッヒ『平和の神学』(新教出版社)が無事に刊行され、研究会の共同研究の成果を形にすることができた。また、何かの形で研究成果が公表できればと考えている。なお、2005年3月の第19回国際宗教学宗教史会議世界大会(東京大会)には、ティリッヒ研究会のメンバーもパネルを企画中である。
 個人的には、最近刊行されたベルリン講義を本格的に研究してみたいと考えている。 

 (2)その他
 モルトマン、パネンベルク、マクフェイグ、リクールなど、取り組むべき課題は少なくない。問題は時間である。

4.その他
 『日本の神学』の書評(5月連休明け締め切り)など。

                      

トップページへ/ページトップへ
inserted by FC2 system