研究紹介1(研究計画)    2005年度版
                               (2005/2/7)     
 
                   過去の計画
                 (2001年度2003年度2004年度

  この頁では、現時点における2005年度の研究計画を紹介してみたい。ただし、研究計画とは研究の進展に伴って柔軟に変更されるものであり、実際、昨年度の場合も、研究計画と実際の実施(Information、研究紹介2の頁を参照)との間には、大きな変更が存在することになった(2005年度は、必要ならば、10月頃に後期の改訂版を作成することも考慮中である)。また、この研究計画は、基本的には、わたし自身の研究のための覚書きであり、あくまで概略的なものであることをお断りしておきたい。また、2005年度も2003年度あるいは2004年度とほぼ同じ枠組みで研究が進められるので、以下の研究テーマの区分は、2003年度のものを使用することにする。

 <内容>
  1.宗教と科学
  2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
  3.近現代のキリスト教思想
  4.その他

1.宗教と科学
 (1)本研究テーマの成果の公開予定
 この「宗教と科学」のテーマとの本格的な取り組みも、すでに10年に近づこうとしている。そこで、今後数年の内に、これまでの研究成果を研究書として出版する方向で、現在出版社と交渉を開始しつつある。2005年度中には、この出版計画について、基本的な方針が確定する予定であり、したがって、本年度は、これまでの研究の中間的な総括をどのようにするかについて検討することが必要になる。  

 (2)京都大学における特殊講義および演習
 この講義と演習を準備することが、同時に「宗教と科学」研究の主要な作業となる。
 ・特殊講義:キリスト教思想における自然の諸問題
     第一章 自然の宗教哲学の構想とティリッヒの次元論
                          (2002年度完了)
     第二章 宗教言語と科学言語   (2002年度完了)
     第三章 形而上学再考   (2003年度完了)
     第四章 精神と宗教     (2004年度完了)
  この「キリスト教思想における自然の諸問題」というテーマのもとでの特殊講義も、上記のように2004年度で一応の完成を見た。しかし、(1)で述べた出版に向けた研究の総括のため、2005年度の特殊講義もそれに合わせてこれまでの中間的なまとめを行うと共に、必要な補足を行いたい。
 ・演習:宗教と科学の新たな関係構築に向けて
     −A.E.マクグラス−
    Alister E. McGrath,
       The Foundations of Dialogue in Science & Religion,
                             Blackwell 1998
  このテキストも3年目となり、最終章の第5章を残すだけになった。前期の内に、このテキストを完了し、マクグラスあるいは他の思想家の次のテキストに進みたい。

 (3)現代キリスト教思想研究会(「宗教と科学」研究会
 2004年4月に、研究会メンバーによる共著『科学時代を生きる宗教−過去と現在、そして未来へ−』(北樹出版)が出版され、2004年度は、新しい研究会の方向性を模索する中で一年が経過した。研究会メンバーのそれぞれの事情もあり、確定的な次の方向性が見えたわけではないが、研究会の実施日を木曜日に戻して、現在取り組んでいる、テキスト(Christianity and Ecology)の輪読を継続したい。また、可能ならば、南山宗教文化研究所などとの交流も進めたい。

 (4)「現代の生命論、環境論との関わりにおけるキリスト教自然神学の再構築」(科学研究費補助金・基盤研究(C)(2))が、2004年度〜2005年度の2年間のプロジェクトとして進行中であるが、2005年度はその締めくくりの年度となる。2006年3月までには研究報告書を完成する必要があるが、同時に、次のプロジェクトによる科学研究費への応募も考えなければならない。次は、(1)との関係で研究成果公開補助に応募することを検討している。しかし、基盤研究(C)(2)ではなく、別の共同研究の形での応募についても、可能性を探りたい。

 (5)宗教倫理学会の研究プロジェクト
 2005年も3月より8月まで、月一回の研究会が予定されているが、2005年度はこれまでの生命倫理や環境倫理のテーマとは別の角度からの新しい研究テーマ(「変化する世界における宗教−相克と調和−」)が設定されている。生命や環境から、より宗教内宗教間の錯綜する関係性やその政治的経済的文化的な背景へと強調点が移ることになるが、「相克や調和」も、「宗教と科学」という問題設定と無関係ではなく、むしろ、相互の結びつきが改めて問われるとも言えよう。

2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
 (1)京都大学における演習(日本・アジアのキリスト教−植村正久−)
 2004年度の植村・海老名論争(キリスト論論争)に続いて、2005年度は、植村正久『真理一斑』を取り上げ、そこから日本のキリスト教思想における、弁証神学や宗教哲学(波多野精一ら)への展開へと繋げることを試みたい。

 (2)COE研究プロジェクト「多元世界における寛容性についての研究」
 このプロジェクトは、これまで隔月の全体研究会と、個人および共同研究とが二つの軸になって進められきたが、2004年度からは研究の第2ステップへ進み、2005年度はその2年目となる。このCOEプロジェクト自体が、2006年度で最終年度を迎えることを考えれば、おそらく、これまでの形態における研究会は今年度が最後となり、その意味でも、研究会としてのこれまで共同研究の締めくくりを行うことが必要になる。2005年度も研究会に若干の新メンバーを加えることになるが、基本的には現在のメンバーにより、宗教的寛容、公共性、アジアという三つの観点を結びつけることを可能な限り試みたい。それに合わせて、隔月の全体研究会を補足する研究会として2004年度から本格的に活動を開始した「宗教的寛容」研究会も、2005年4月に刊行予定の報告書(『宗教と寛容』仮題)から、さらに次の段階へと議論を深めることが求まられる。その他、3回目となる国際シンポジウムは、社会学関係者を中心に実施予定である(中国上海での開催が企画されつつあるとのことである)。

 (3)現代キリスト教思想研究会(「アジアと宗教的多元性」研究会
 月1回の研究会と年度末の研究雑誌の発行が主な活動であるが、各参加メンバーの研究テーマに即して言えば、2005年度も日本のキリスト教思想史(キリスト教思想と哲学、日韓キリスト教の関係史などを含む)を様々な角度から取り扱うことになるものと思われる。すなわち、2005年度も2004年度と基本的に同じであり、またこの研究会が、上記のCOE研究プロジェクトと密接な関わりにおいて進められることも同様である。しかし、2005年度は、中国人研究者を新たに加えることにより、これまでよりも、「アジア」(東アジア)という研究会の目標に一歩近づくことが期待され、また研究会メンバーを中心とした共著刊行も具体的な作業に入るなど、様々な展開が展望されている。

 (4)研究発表・研究論文
 研究論文としては、現代キリスト教思想研究会関連の雑誌論文の他に、『基督教学研究』(京都大学基督教学会、水垣先生の記念号)への執筆を予定している。研究発表としては、現時点では日本宗教学での発表が考えられている。

3.近現代キリスト教思想研究
 (1)ティリッヒ研究−現代キリスト教思想研究会(「ティリッヒ」研究会)として−
 これまで、月1回の研究発表階と、雑誌『ティリッヒ研究』の発行を中心に研究会の活動を続けてきたが、年2回の雑誌の発行は現時点での研究会メンバーの状況から判断するならば、やはり困難であり、2004年度同様に、年度末の刊行を目指すことになるであろう。その他は、基本的に2005年度も同様の活動を継続する予定であるが、2005年3月の第19回国際宗教学宗教史会議世界大会(東京大会)へのパネル参加を区切りとして、研究会のあり方について再考する必要があると思われる。なお、個人的には、ベルリン講義について、論文執筆を計画中である

(2)その他
 モルトマン、パネンベルク、マクフェイグ、リクールなど、取り組むべき課題は少なくない。2005年度は、こうした中で、パネンベルクとプロセス神学を題材とした論文を準備したいと考えている。

4.その他
 2005年度も、 『日本の神学』の書評(5月連休明け締め切り)が予定されている。その他の書評執筆は未定であるが、2005年度から京都大学学生にとっては演習扱いとなる、「キリスト教思想研究の現在」研究会では、書評執筆という形態の発表を念頭においた作業を進めて行きたいと考えている。

                      

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