研究紹介1(研究計画)    2006年度版
                               (2006/2/7)     
 
                過去の計画
               (2001年度2003年度2004年度2005年度

  この頁では、現時点における2006年度の研究計画を紹介してみたい。ただし、研究計画とは研究の進展に伴って柔軟に変更されるものであって、実際、2005年度の場合も、研究計画と実際の実施(Informationや研究紹介2)との間には、大きな変更が存在することになった。したがって、ここでの研究計画は、あくまで現時点のものである。また、この研究計画は、わたくし自身の研究のための覚書きであり、あくまで概略的なものである。

 <内容>
  1.宗教と科学
  2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
  3.近現代のキリスト教思想
  4.寛容・対話・公共性

1.宗教と科学
 (1)本研究テーマの成果の公開予定
 この「宗教と科学」のテーマとの本格的な取り組みも、すでに10年に近づこうとしている。そこで、これまでの研究成果を研究書として出版するために、現在出版助成への応募を行っている。この助成が認められれば、2006年度中には、これまでの研究成果をまとまった形で、公開できるであろう。 

 (2)京都大学における特殊講義および演習
 京都大学での特殊講義と演習では、ここ何年にもわたって、「宗教と科学」に関連したテーマやテキストを取り上げてきた。しかし、いずれについても、2005年度で一連の構想は一応の完結をみたので、2006年度は、これまでの議論との関係を確認しつつ、新たな研究テーマへの接続を試みることになる(「4.寛容・対話・公共性」がその新しいテーマに関わる問題である)。
 ・特殊講義:2002年度から2005年度まで行ってきた「キリスト教思想における自然の諸問題」について、その総括を行い(自然神学の現代的意義を中心に)、そこから、コミュニケーション、公共性といった問題への展開をめざす。したがって、前期の講義は、再度「宗教と科学」の総括ということになる。
 ・演習:この3年の間、Alister E. McGrathの次のテキストを取り扱ってきた。The Foundations of Dialogue in Science & Religion,
                         Blackwell 1998
  しかし、このテキストの読解・分析は2005年度前期で完了したため、2006年度は、「宗教と科学」との関連で注目すべき思想として、プロセス神学を取り扱う予定である。2006年度は、その導入ということになる。

 (3)現代キリスト教思想研究会(「宗教と科学」研究会
 研究会メンバーによる共著『科学時代を生きる宗教−過去と現在、そして未来へ−』(北樹出版)の出版以降、新しい研究会の方向性を模索してきたが、今後の方向性については、不確定の要素を残しつつも、毎月一回のペースで研究会を行ってきている。輪読テキスト(Christianity and Ecology)は、まだ未読部分を多く残すので、2006年度もこのテキストの輪読を中心に研究会は進められるであろう。

 (4)宗教倫理学会の研究プロジェクト
 2006年も、昨年度に引き続き、「変化する世界における宗教−相克と調和−」という統一テーマの下で、月一回の研究会が行われる(3月から9月)。(2)で説明した「特殊講義」の場合と同様に、「相克や調和」という問題が、「宗教と科学」という問題と緊密に結びついている点に留意したい。

 (5)その他
 以前から行ってきた、南山宗教文化研究所との交流の一環として、南山宗教文化研究所でのシンポジウム「科学・こころ・宗教」(2006年5月12日〜13日)にコメンテーターとして参加予定である。今後の展開が楽しみである。

2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
 (1)京都大学における演習(日本・アジアのキリスト教−植村正久−)
 2006年度は、2005年度に引き続いて、植村正久『真理一斑』を取り上げる。後期には、植村から、日本のキリスト教思想における、弁証神学や宗教哲学(波多野精一ら)への展開へと議論を進めることができるものと考えている。

 (2)COE研究プロジェクト「多元世界における寛容性についての研究」
 このプロジェクトは、これまで隔月の全体研究会と、個人および共同研究とが二つの軸になって進められきたが、2006年度はいよいよ最終年度を迎える。これまでの共同研究を総括し、一定の形に集約することが必要になるが、具体的には、10月にこれまでの議論を総括する国際シンポジウムを行い、それも含めて、報告書を出版する予定である。現時点では、まだそれぞの内容については十分な検討が行われていないが、隔月の研究会は、シンポジウムと報告書出版の二つを念頭に進められることになるであろう。
 また、COE研究会と合わせて、2004年度から行ってきた「宗教的寛容」研究会は、2006年3月に刊行予定の報告書(『宗教と公共性』)をもって活動終了となる。

 (3)現代キリスト教思想研究会(「アジアと宗教的多元性」研究会
 月1回の研究会と年度末の研究雑誌の発行が主な活動であるが、各参加メンバーの研究テーマに即して言えば、2006年度も日本のキリスト教思想史(キリスト教思想と哲学、日韓キリスト教の関係史などを含む)の諸問題を様々な角度から取り扱うことになるものと思われる。2005年度は、この研究会のメンバーによる共著『比較宗教学への招待』(上記のCOE研究での国際シンポジウムも含む)の出版という企画を軸に研究会活動が進められたが、2006年では、新しい共同研究の可能性を考えつつも、これまで同様に、毎月の研究会を着実に行ってゆきたい。

 (4)研究発表・研究論文
 研究論文としては、京都大学での21世紀COEプロジェクトの報告論集『グローバル化時代の人文学』のための論文「東アジア世界における宗教的寛容と公共性」を中心に、研究会発行の雑誌への論文執筆などが予定されている。その他には、『日本の神学』への書評やシンポジウム報告などが現時点で決まっている。なお、研究発表としては、日本宗教学(東北大学)での発表が考えられるが、どんな形態(個人発表かパネルか)で行うかは今後検討したい。
 また、2006年度後期からは、日本基督教学会との関係で、大きな変化も予定されており、こうした点も研究計画に影響を及ぼすことになるかもしれない。

3.近現代キリスト教思想研究
 (1)ティリッヒ研究−現代キリスト教思想研究会(「ティリッヒ」研究会)として−
 2005年度は、それまで月1回のペースで行ってきた研究会を、メンバーの学会発表準備と、雑誌『ティリッヒ研究』の論文執筆準備に限定し、回数を大幅に減らす形で行った。2006年度も、こうした形での活動になるものと思うが、さらに別の形態(インターネット上の研究会)への移行も検討したい。なお、個人的には、ティリッヒと19世紀のドイツ思想史との関わりでこれまで執筆してきたいくつかの論文をまとめる作業を行ってみたい。また、『社会主義的決断』についても改めて分析を行いたい。

(2)その他
 モルトマン、パネンベルク、マクフェイグ、リクールなど、取り組むべき課題は少なくない。2006年度は、こうした中で、宗教の神学やプロセス神学などを中心に取り組んでみたい。

4.寛容・対話・公共性
 2006年度の研究計画の特徴は、これまでの本研究計画の説明でも示唆してきたように、「寛容・対話・公共性」への研究テーマの移行を挙げることができる。これは、これまで断片的に行ってきた問題への本格的な取り組みである。大学での講義や演習、様々な研究会での活動も、この移行を反映したものとなる。現代キリスト教思想研究会に属する諸研究会を整理し、新しい研究テーマに沿った研究会の発足も考えねばならない。

                      

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