研究紹介1(研究計画)    2009年度版
                             (2009/2/24)   
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 この頁では、現時点における2009年度の研究計画を紹介してみたい。ただし、研究計画とは研究の進展に伴って柔軟に変更されるものであり、現時点では、不確定要素がいくつか存在しているため(研究費応募の結果など)、研究計画については、一定の手直しの必要性が予想される。したがって、ここでの研究計画は、あくまで現時点のものである。また、この研究計画は、わたくし自身の研究のための覚書きであり、あくまで概略的なものである。

 <内容>
  1.宗教と科学
  2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
  3.近現代のキリスト教思想
  4.近代/ポスト近代とキリスト教(政治・経済・民族)
  5.その他

1.宗教と科学
 (1)「宗教と科学」に関係の研究会
この「宗教と科学」のテーマとの本格的な取り組みも、すでに15年間に及び、現在も継続中である。この数年来の南山大学宗教文化研究所のプロジェクト(GPSSの「科学 こころ 宗教」)への参加し、また宗教倫理学会でも関連の議論を行っている。「脳科学と宗教」というテーマへの取り組みなど、新しい展開も予想される(これについては、不確定要素があるので明確な計画を示すことはできない)。昨年度から始まった新しい研究としては、数年後のマクグラス(The Open Secret, 2008)の翻訳を目指した研究会(マクグラス研究会)があるが、今年度も日本宗教学会の学術大会での発表など積極的に取り組みたい。

 (2)京都大学における特殊講義および演習
 京都大学での特殊講義と演習では、ここ何年にもわたって、「宗教と科学」に関連したテーマやテキストを取り上げてきた。しかし、特殊講義に関しては、2007年度以降は、「4.政治・経済・民族」に関連した内容に、テーマを移行させつつある。しかし、2009年度も、2008年度と同様に、特殊講義においても「宗教と科学」に関連した問題を扱う予定である。
  2008年度の演習では、マクグラス、プロセス神学、モルトマンに続いて(テキストとして使用していたモルトマンの文献の邦訳が出版されたためにテキストを変更)、パネンベルクに続いて、ヒックのテキストによって、「宗教と科学」のテーマに継続的に取り組みたい。ただし、2009年度は、大学院授業とし、この演習を本来の演習レベルに近づくようにしたい。
    John Hick, The New Frontier of Religion and Science.  
  Religious Experience, Neuroscience and the Transcentent,  
  Macmillan, 2006.
 
 (3)その他
 2008年度も、以前から行ってきた、南山宗教文化研究所との交流の一環として、南山宗教文化研究所での研究プロジェクト「科学・こころ・宗教」への参加を継続して行う予定である。今後の展開が楽しみである。

2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
 (1)京都大学における演習(日本・アジアのキリスト教-波多野精一-)
 この演習は、2008年度から、2005年度以来の植村正久を経て、波多野精一へとテーマを進めてきたが、波多野との取り組みは、2009年度も含め、これから数年間継続の予定である。波多野を取り上げる目的は、波多野宗教哲学の近代日本のキリスト教思想研究における決定的な意義を解明することはもちろんであるが、加えて、アジア・日本におけるキリスト教思想研究の今後の可能性を展望することであり、これがこの演習の本来の意図にほかならない。2008年度は、宗教哲学三部作以前の主著として、『西洋哲学史要』『基督教の起源』を扱かったが、2009年度は、波多野宗教哲学の方法論に関わる文献を読むことにしたい。この波多野宗教哲学に関しては、今後、新しい研究テーマとしての展開の可能性がある(これについてもこの研究計画では扱えない別の要因が絡んでくる)。日本基督教学会学術大会の公開シンポジウムでの提題でも、関連の問題を扱うことになるだろう。

 (2)現代キリスト教思想研究会(「アジアと宗教的多元性」研究会)
 月1回の研究会と年度末の研究雑誌の発行が主な活動であるが、各参加メンバーの研究テーマに即して言えば、2009年度も日本のキリスト教思想史(キリスト教思想と哲学、日韓キリスト教の関係史などを含む)の諸問題を様々な角度から取り扱うことになるものと思われる。少しずつ、新しいメンバーも加えつつ、刺激的で創造的な討論の場を構築し、共同研究も具体化してゆきたい。昨年度より、数年後の論文集刊行などを構想しつつあるが、今年度はこの点についてより明確な方向性を示したい。『アジア・キリスト教・多元性』の刊行はこれまで通りである。なお、昨年度同様に、夏季に特別の企画を設定したい。
 
3.近現代キリスト教思想研究
 (1)ティリッヒ研究─現代キリスト教思想研究会(「ティリッヒ」研究会)として─ 「2007年度は、2006年度同様に、雑誌『ティリッヒ研究』の刊行を中心に、可能ならば、学会での共同研究についても実現を図りたい。なお、かねてより計画してきた、Web上における研究会活動についても、その具体化のめどをたてたいと考えている。」という文章に付け加えるものは、現時点ではとくにない。しかし、個人のティリッヒ研究としては、2009年度中に研究書を出版予定である。

 (2)その他
 モルトマン、パネンベルク、マクフェイグ、リクール、アガンベンなど、取り組むべき思想家は少なくない。2009年度は、2007年度、2008年度に引き続き社会思想や政治思想との関連性を念頭に研究を継続したい。

4.「近代/ポスト近代とキリスト教」(寛容・対話・公共性)
 2009年度は、2007年度、2008年度に引き続き、「政治・経済・民族」という研究テーマに本格的に取り組む予定である。一つは、京都大学の特殊講義でこのテーマを集中的に論じること(2009年度の中心ポイントは経済である)、もう一つは、「近代/ポスト近代とキリスト教」研究会である。この研究会も3年目に入るが、2007年と2008年の報告書に続き、もう一度、具体的なテーマ設定(おそらくは、近代的知とキリスト教、といったものになるだろう)のもとで、研究成果を報告書にまとめ、さらに次の段階で、論文集の出版を実現させる予定である。

5.その他
 以上の他に、2006年10月に京都大学キリスト教学で引き受けた日本基督教学会事務局も、2008年10月からは二期目に入り、学会事務に関する業務には一定程度なれてきたものの、引き続き大変な状況が続く。「これを単に事務作業の増加という仕方で捉えるのではなく、新しい研究(海外との交流なども)へとつなげてゆくことを試みたい。」というのは、今後の努力目標である(2009年6月に予定の日中韓神学フォーラムなどはその一つの形)。なお、申請中の研究企画の採択などの結果によっては、それに応じた研究の展開が必要になるが、これらの点については、見通しが立った時点で考えたい。                

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