研究計画(研究紹介1)    2011年度版
                             (2011/3/3)   
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 この頁では、現時点における2011度の研究計画を紹介してみたい。ただし、研究計画とは研究の進展に伴って柔軟に変更されるものであり、現時点では、不確定要素がいくつか存在しているため(研究費応募の結果など)、研究計画については、一定の手直しの必要性が予想される。したがって、ここでの研究計画は、あくまで現時点のものである。また、この研究計画は、わたくし自身の研究のための覚書きであり、あくまで概略的なものである。

 <内容>
  1.宗教と科学
  2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
  3.近現代のキリスト教思想
  4.近代/ポスト近代とキリスト教(政治・経済・民族)
  5.その他

1.宗教と科学
 (1)「社会科学との連関におけるキリスト教自然神学の再構築─環境論と経済学を焦点として─」(科学研究費補助金交付による研究、2010年度~12年度)
 科研の研究補助を受けて、3年間にわかって、これまでの自然神学に関わる研究を継続的に発展させることになった。この研究企画に関しては、随時、ブログ「自然神学・環境・経済」で報告を行っている。2011年度は二年目となるので、実質的な研究の進展をめざしたい。

 (2)「宗教と科学」に関係の研究会
 この数年取り組んできたマクグラス(The Open Secret, 2008)の翻訳も、3月3日現在、後は校正作業を残すだけとなり、おそらくは、4月中に、遅くとも連休開けには、店頭に並ぶものと思われる。このテーマでの共同研究については、現時点では計画はないものの、年度途中での新しい動きはあり得るかもしれない。

 (3)京都大学における演習
 京都大学の演習では、この間、かなりの長期にわたって「宗教と科学」に関連したテキストを取り上げてきた。2011年度も、大学院演習として、「キリスト教と環境論・エコロジー」のテーマに関わる文献(次の論集など)を扱う予定である。
  Hessel, Dieter T. and Ruether, Rosemary Radford (eds),
 Christianity and Ecology. Seeking the Well-Being of  Earth and Humans, Cambridge: Harvard University Press,2000.

2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
 (1)京都大学における演習(日本・アジアのキリスト教-波多野精一-)
 この演習は、2008年度から、2005年度以来の植村正久を経て、波多野精一へとテーマを進めてきたが、波多野との取り組みは、2011年度も継続される。波多野を取り上げる目的は、波多野宗教哲学の近代日本のキリスト教思想研究における決定的な意義を解明することはもちろんであるが、加えて、アジア・日本におけるキリスト教思想研究の今後の可能性を展望することであり、これがこの演習の本来の意図にほかならない。2008年度は、宗教哲学三部作以前の主著として、『西洋哲学史要』『基督教の起源』を、また、2009年度は、波多野宗教哲学の方法論に関わる文献(『宗教哲学序論』など)を、2010年度は『宗教哲学』を扱った。2011年度は、いよいよ『時と永遠』に入ることなる。

 (2)現代キリスト教思想研究会(「アジアと宗教的多元性」研究会)
 月1回の研究会と年度末の研究雑誌の発行が主な活動であるが、各参加メンバーの研究テーマに即して言えば、2011年度も日本のキリスト教思想史(キリスト教思想と哲学、日韓キリスト教の関係史などを含む)の諸問題を様々な角度から取り扱うことになるものと思われる。少しずつ、新しいメンバーも加えつつ、刺激的で創造的な討論の場を構築し、共同研究も具体化してゆきたい。この数年考えてきた論文集刊行の構想については、現時点では、まだ考慮中の状況である。『アジア・キリスト教・多元性』の刊行はこれまで通りである。なお、今年度こそ、夏季に特別の企画を実現したい。
 
3.近現代キリスト教思想研究
 (1)ティリッヒ研究
 「この10年あまりの間、『ティリッヒ研究』を中心に発表してきた論文を、一冊の論文集にまとめ、可能ならば、2010年度中に刊行したい。」と昨年度の研究計画には書いたが、実現は、2011年度に延期された。今年度こそはと考えている。また、この論文集をスタートして、研究書出版の新しい形に道をつけたい。

 (2)宗教哲学研究
 これまでそれぞれ別々に進めてきた議論を、「宗教哲学」として集約する方向で、新しい研究をスタートさせたい。核になるのは、ティリッヒ、ハイデッガー、リクール、ヒック、そして波多野である。具体的には、2011年度の京都大学での特殊講義(前期分)で、その基本的構想を明らかにする予定である。また、波多野に関しては、宗教哲学三部作を中心とした作業を夏を中心に集中的に行う予定である。その成果は、その後、あまり時間をおかずに公にされることになる。

 (3)その他
 モルトマン、パネンベルク、マクフェイグ、リクール、アガンベンなど、取り組むべき思想家は少なくない。2011年度は、2007年度~2010年度まで継続的に取り組んできた「社会思想や政治思想との関連性を念頭に研究」を、京都大学での特殊講義(後期分)と聖書演習(後期)に進める予定である。

4.「近代/ポスト近代とキリスト教」(寛容・対話・公共性)
 2011年度は、2007年度~2010年度に引き続き、「政治・経済・民族」という研究テーマに本格的に取り組む予定である。一つは、京都大学の特殊講義でこのテーマを集中的に論じること(2011年度「キリスト教と社会理論の諸問題(2)」は、これまでの議論を前提に、宗教哲学の構想を提示し(前期)、その後に、「環境と経済」をめぐる問題を論じる予定である)、もう一つは、「近代/ポスト近代とキリスト教」研究会である。この研究会も5年目に入るが、2007年~2010年の報告書に続き、具体的なテーマ設定(おそらくは、キリスト教と近代世界、といったものになるだろう)のもとで、研究成果を報告書にまとめ、さらに次の段階で、論文集の出版を実現させる予定である。

5.その他
 以上の他に、2006年10月に京都大学キリスト教学で引き受けた日本基督教学会事務局も、2010年9月には、二期目が終了し、次期事務局に仕事を引き継ぐことができた。それで諸学会関係の仕事がすべてなくなったわけではないとしても、研究と教育の両面で、より余裕をもって取り組むことが可能になるはずであった。現実は、なかなか期待通りには進まない、これが大きな問題であるが。
 また、この数年の傾向として、京都大学キリスト教学専修では、大学院生が増えつつある。とくに、海外からの留学生はかなりの増加であり、そのための教育的配慮が求められるとともに、こうした状況を生かした研究プロジェクトを企画したいと考えている。日本、韓国、中国、アメリカにまたがる集中的な共同研究の実現を図りたい。これは、2010年度に引き続き取り組むべき問題である。
                

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