研究計画(研究紹介1)    2012年度版
                             (2012/3/9)   
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 この頁の目的は、現時点における2012度の研究計画を紹介することである。もちろん、研究計画とは研究の進展に伴って柔軟に変更されるものであり、現時点では、不確定要素がいくつか存在しているため(2012年度の研究会の具体的な動向など)、研究計画については、一定の手直しの必要性が予想される。したがって、ここでの研究計画は、あくまで現時点のものである。また、この研究計画は、わたくし自身の研究のための覚書きであり、あくまで概略的なものである。

 <内容>
  1.宗教と科学
  2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
  3.近現代のキリスト教思想
  4.近代/ポスト近代とキリスト教(政治・経済・民族)
  5.その他

1.宗教と科学
 (1)「社会科学との連関におけるキリスト教自然神学の再構築─環境論と経済学を焦点として─」(科学研究費補助金交付による研究、2010年度~12年度)
 科研の研究補助を受けて、3年間にわたって進めてきた研究も、2012年度で完了する。これまでの研究成果などについては、随時、ブログ「自然神学・環境・経済」で報告を行ってきた通りであるが、今年度は最終年度としての締めくくりが必要になる。かなり、充実した内容で締めくくるめどはついてきたが、さらにその後の研究費の獲得のためにも、きちんとした仕方で研究を完成させたい。

 (2)「宗教と科学」に関係した研究
 この数年取り組んできたマクグラス(The Open Secret, 2008)の翻訳は、昨年無事に出版された。その後は、「脳科学と宗教」というテーマでの論文を執筆し(現在、この論文を含む論文集の出版にむけた努力がなされている。H先生よろしく、お願いいたします)、「宗教と科学」に関連した研究も地道に継続中である。なお、「脳科学と宗教」に関連した文献紹介のブログを昨年から開設した。「現代キリスト教倫理ゼミナール」(2011年度のポケゼミ用のブログの転用)というものであるが、今後、少しずつ、データを蓄積して行きたい。

 (3)京都大学における演習
 京都大学の演習では、この間、かなりの長期にわたって「宗教と科学」に関連したテキストを取り上げてきた。2012年度は、昨年度に引き続き、大学院演習として、「キリスト教と環境論・エコロジー」のテーマに関わる文献(次の論集など)を扱う(第三部より)。2012年度で読み上げることができるかは、微妙であるが。
  Hessel, Dieter T. and Ruether, Rosemary Radford (eds),
 Christianity and Ecology. Seeking the Well-Being of  Earth and Humans, Cambridge: Harvard University Press,2000.

2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
 (1)京都大学における演習(日本・アジアのキリスト教-波多野精一-)
 この演習は、2005年度以来の植村正久を経て、2008年度から、波多野精一へとテーマを進めてきたが、波多野との取り組みは、2012年度も継続される。波多野を取り上げる目的は、波多野宗教哲学の近代日本のキリスト教思想研究における決定的な意義を解明することはもちろんであるが、加えて、アジア・日本におけるキリスト教思想研究の今後の可能性を展望することであり、これがこの演習の本来の意図にほかならない。2008年度は、宗教哲学三部作以前の主著として、『西洋哲学史要』『基督教の起源』を、また、2009年度は、波多野宗教哲学の方法論に関わる文献(『宗教哲学序論』など)を、2010年度は『宗教哲学』を、そして2011年度は、『時と永遠』を扱った。これで、代表的な著作は完了とも言えるが、2012年度は、まだ扱っていない文献(『西洋宗教思想史、希臘の巻第一』など)を読み上げ、波多野宗教哲学をテーマ的に整理する仕方で、より体系的に分析する予定である。

 (2)現代キリスト教思想研究会(「アジアと宗教的多元性」研究会)
 月1回の研究会と年度末の研究雑誌の発行が主な活動であるが、各参加メンバーの研究テーマに即して言えば、2012年度も日本のキリスト教思想史(キリスト教思想と哲学、日韓キリスト教の関係史などを含む)の諸問題を様々な角度から取り扱うことになるものと思われる。少しずつ、新しいメンバーも加えつつ、刺激的で創造的な討論の場を構築し、共同研究も具体化してゆきたい。この数年考えてきた論文集刊行の構想については、引き続き考慮中である。『アジア・キリスト教・多元性』の刊行はこれまで通りである。なお、この研究会については、より持続的で多面的な活動が可能な仕方での改変を検討中である。
 
3.近現代キリスト教思想研究
 (1)ティリッヒ研究
 「この10年あまりの間、『ティリッヒ研究』を中心に発表してきた論文を、一冊の論文集にまとめ、可能ならば、2010年度中に刊行したい。」と2年前の研究計画には書いたが、実現は、2011年度から2012年度にさらに延期された。「今年度こそはと考えている。また、この論文集をスタートして、研究書出版の新しい形に道をつけたい」というのは変わりないが、いくつかの大きめの仕事がすでに入っており、実現は早くて、2012年度の後半にならざるを得ないであろう。

 (2)宗教哲学研究
 これまでそれぞれ別々に進めてきた議論を、「宗教哲学」として集約する方向で、新しい研究をスタートさせたい。核になるのは、ティリッヒ、ハイデッガー、リクール、ヒック、そして波多野である。波多野に関しては、昨年から取り組んできている仕事が、夏には完了し秋には刊行されることになっている。これと並行して、京都大学での特殊講義を中心に、宗教哲学研究をさらに推し進めたい。

 (3)その他
 モルトマン、パネンベルク、マクフェイグ、リクール、アガンベンなど、取り組むべき思想家は少なくない。2012年度は、2007年度~2011年度まで継続的に取り組んできた「社会思想や政治思想との関連性を念頭に研究」を、京都大学での特殊講義と聖書演習(後期)に進める予定である。この点は、2011年度の継続であるが、リクールが大きなポイントになりそうである。

4.「近代/ポスト近代とキリスト教」(寛容・対話・公共性)
 2012年度は、2007年度~2011年度に引き続き、「政治・経済・民族」という研究テーマに本格的に取り組む予定である。 
 具体的には、京都大学の特殊講義(2012年度「キリスト教と社会理論の諸問題(3)」)が中心になる。
 2012年度はこれまでの議論を前提に、前期においては、「政治と宗教」に関してイデオロギーとユートピアに再度取り組み、聖書の知恵思想との関わりを明確にしたみたい、後期は、「経済と環境」というテーマに焦点を移す。
 なお、2011年度まで、5年間にわたって行われてきた「近代/ポスト近代とキリスト教」研究会であるが、2011年度で、その活動は完了する。研究成果報告書は現在まとめられつつあるが、論文集の出版や、次の研究会のことなどは、現在は未定である。

5.その他
 研究をとりまく状況は、必ずしも好転せず、なぜか、忙しさは増すばかりである。学会関連の仕事は以前ほどではないが、まだ一段落とはゆかない。それに組合の仕事が新年度に食い込んでいるので、研究教育以外の仕事は、2012年度もあいかわらずの状況となると思われる。
 また、近年の傾向として、「京都大学キリスト教学専修では、大学院生が増えつつある。とくに、海外からの留学生はかなりの増加であり、そのための教育的配慮が求められるとともに、こうした状況を生かした研究プロジェクトを企画したいと考えている」。この状況についても、特に大きな変化はない。しかし、2012年度はいくつか新しい試みを行い、教育体制の強化をはかりたいと考えている。
                

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