研究計画(研究紹介1)    2015年度版
                             (2015/3/15)   
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 この頁の目的は、現時点における2015度の研究計画を紹介することである。もちろん、研究計画とは研究の進展に伴って柔軟に変更されるものであり、今後、研究計画については、一定の手直しの必要性が予想される。この研究計画は、あくまで現時点のものであり、わたくし自身の研究のための覚書きであり、あくまで概略的なものである。

 <内容>
  1.宗教と科学
  2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
  3.近現代のキリスト教思想
  4.近代/ポスト近代とキリスト教(政治・経済・民族)
  5.その他

1.宗教と科学
 (1)「自然神学の言語論的転回とその社会科学への拡張─聖書・環境・経済─」(科学研究費補助金交付による研究、2013年度~2015年度)」
 科研の研究補助による「社会科学との連関におけるキリスト教自然神学の再構築─環境論と経済学を焦点として─」(2010年度~12年度)に続いて、2013年度から開始された研究プロジェクトも3年目、つまり最終年となる。今年度はこれまでの総括、締めくくりを行わねばならない。韓国の研究調査と研究会企画(宗教哲学・否定神学研究会など)を中心にしつつも、後期には報告書を視野に入れた作業に入る予定である。その研究成果などについては、これまで通り、ブログ「自然神学・環境・経済」において報告される。次の科研費の獲得に向けた応募も並行して進められる。

 (2)講義や演習において
 京都大学の演習では、この間、かなりの長期にわたって「宗教と科学」に関連したテキストを取り上げてきたが、今年度もこの演習を休止となる。しかし、後期の特殊講義では、(1)の締めくくりの作業に相当する内容を扱い、さらに東京大学での集中講義もこの作業の一貫となる。

 (3)テンプルトン財団の研究補助による共同研究
 この4月に、南山大学の金承哲先生を中心にアメリカのテンプルトン財団に申請していた共同研究プロジェクトが採択され、研究がスタートする。テーマは、「宗教と科学」の対話と日本における宗教教育、というものであり、わたくしも引き続き一定のコミットを行うことになる。

2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
 (1)京都大学における演習(日本・アジアのキリスト教)
 この演習は、2005年度以来の植村正久を経て、2008年度から、波多野精一へとテーマを進めてきたが、2012年度で波多野との取り組みは一段落となり、2013年度から、無教会キリスト教へとテーマを移し、まず、内村鑑三の非戦論を取り上げた。内村鑑三の中心思想のうち、特に非戦論に焦点をあわせつつ、内村のキリスト教思想の特徴とその意義について議論を行う試みである。その際に、内村を、キリスト教思想史における戦争・平和論(絶対平和思想、正戦論、聖戦論の諸類型。19世紀以降の国民国家のなかでのキリスト教)の中に位置づけると共に、内村以降の矢内原忠雄、南原繁、政池仁ら無教会第二世代への思想展開に留意しつつ、内村自身の基本テキストの精読とそれに基づく思想分析がなされた。昨年度は後期から矢内原のテキストを検討したが、これは今年度の前期へと引き継がれる。そして、今年度後期からは、南原繁へとテーマを移す予定である。

 (2)現代キリスト教思想研究会(「アジアと宗教的多元性」研究会)
 月1回の研究会と年度末の研究雑誌の発行が主な活動であるが、各参加メンバーの研究テーマに即して言えば、2015年度も日本のキリスト教思想史(キリスト教思想と哲学、日韓キリスト教の関係史などを含む)の諸問題を様々な角度から取り扱うことになるものと思われる。少しずつ、新しいメンバーも加えつつ、刺激的で創造的な討論の場を構築し、共同研究も具体化してゆきたい。この数年考えてきた論文集刊行の構想については、引き続き考慮中である。『アジア・キリスト教・多元性』の刊行はこれまで通りである。この研究会は、2013年度より、持続的で多面的な活動が可能な仕方での活動の実施に向けた体制整備を行ってきたが、今年度はそろそろこの作業を完了したい。
 
 (3)出版に向けて
 今年の夏を中心に、ここしばらく地道に作業を進めてきた、「日本キリスト教思想史研究」の出版に向けた作業を、原稿を出版社に送る段階まで完了したいと考えている。今年こそは、なんとかしなければならない。

3.近現代キリスト教思想研究
 (1)ティリッヒ研究
 「この10年あまりの間、『ティリッヒ研究』を中心に発表してきた論文を、一冊の論文集にまとめ、可能ならば、2010年度中に刊行したい。」と3年前の研究計画には書いたが、実現は、2011年度から2013年度にさらに延期された。「今年度こそはと考えている。また、この論文集をスタートして、研究書出版の新しい形に道をつけたい」というのは変わりないが、まだ具体的な展望はない。しかし、2013年度は、演習でティリッヒ「宗教哲学」(1925)を取りあげ、2014年度は、1951年の『組織神学』(第一巻)をドイツ語版で読んだ。今年度は、1920年代後半の教義学講義を取り上げる。ティリッヒ研究をめざす大学院生も現れ始め、少しずつmティリッヒ研究も含めた研究会の再開を行う時期かもしれない。

 (2)宗教哲学研究
 これまでそれぞれ別々に進めてきた議論を、「宗教哲学」として集約する方向で、新しい研究をスタートさせたい。核になるのは、ティリッヒ、ハイデッガー、リクール、ヒック、そして波多野である。
シュスラー編の論集の翻訳作業を共同研究として進める中で、この翻訳を含めた研究会「宗教哲学・否定神学」が始まったので、この研究会を軸にしばらくは研究を進めたい。

 (3)その他
 モルトマン、パネンベルク、マクフェイグ、リクール、アガンベンなど、取り組むべき思想家は少なくない。2013年度から、新しい科研費による研究に対応する仕方で、特殊講義「キリスト教思想の新しい展開──自然・環境・経済・聖書」がスタートし、その中でこれまでまとめてこなかった思想家、特にモルトマンなどについて、研究として形にしたいと考えている。

4.「近代/ポスト近代とキリスト教」(寛容・対話・公共性)
 2015年度は、2013年度から始まった、特殊講義「キリスト教思想の新しい展開──自然・環境・経済・聖書」が引き続き行われる。前期は、昨年度の続きで、近代日本キリスト教思想史を扱う(中心は無教会)。これは、夏期に出版に向けた作業を進める際に基礎となる。後期は、すでに述べたように、自然神学を、政治思想・政治神学へ拡張する試みの現時点での総括を行う。

5.その他
 研究をとりまく状況は、必ずしも好転せず、なぜか、忙しさは増すばかりである。学会関連の仕事は以前ほどではないが(日本基督教学会の編集委員長の仕事の山は、5月からの学会誌の編集作業になると思われる)、まだ一段落とはゆかない。それに組合の仕事に加え、過半数代表者の仕事も今年いっぱいは続くので、完全に研究に集中とはいかないかもしれない(この状況は今年で一段落にしたいものであるが、うまく行くか?)。
 また、近年の傾向として、「京都大学キリスト教学専修では、大学院生が増えつつある。とくに、海外からの留学生はかなりの増加であり、そのための教育的配慮が求められるとともに、こうした状況を生かした研究プロジェクトを企画したいと考えている」。この状況についても、特に大きな変化はないが、2013年度から研究会と演習の中間形態として進めてきた「キリスト教思想研究の現在」は、再度研究会に戻すことになった。
 2012年度から、始まった研究室の紀要、『キリスト教学研究室紀要』(電子ジャーナル)も、現在第3号の編集に入っている。
                

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