研究計画(研究紹介1)    2016年度版
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 この頁の目的は、現時点における2016度の研究計画を紹介することである。もちろん、研究計画とは研究の進展に伴って柔軟に変更されるものであり、今後、研究計画については、一定の手直しの必要性が予想される。この研究計画は、あくまで現時点のものであり、わたくし自身の研究のための覚書きであり、あくまで概略的なものである。

 <内容>
  1.宗教と科学
  2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
  3.近現代のキリスト教思想
  4.近代/ポスト近代とキリスト教(政治・経済・民族)
  5.その他

1.宗教と科学
 (1)「拡張された自然神学の具体化としての「科学技術の神学」─東アジアの文脈で─」(科学研究費補助金交付による研究、2016年度~2018年度)」
 科研の研究補助による「自然神学の言語論的転回とその社会科学への拡張─聖書・環境・経済─」(2013年度~15年度)に続いて、それを展開するものとして、本年度から新しい研究プロジェクトが開始された。今年度は「科学技術の神学」と「東アジアの文脈」について、その具体的な内実を明確化し、研究の方向性を確定することが目指される。これまで同様に、文献研究とフィールだ研究が方法論としては組み合わされることになるが、その組み合わせ・関連付けについて、方法論的反省が必要になるものと思われる。これまでのブログ「自然神学・環境・経済」とは別に、この新しい研究プロジェクト用のブログを開設する予定である。

 (2)講義や演習において
 京都大学の演習では、この間、かなりの長期にわたって「宗教と科学」に関連したテキストを取り上げてきたが、今年度もこの演習を休止となる。また、前期の特殊講義では、(1)の内容に関わるものとして、キリスト教政治思想の概要をまとめる作業が行われる。

 (3)共同研究
 宗教倫理学会の研究プロジェクトの関連で、脳科学について発表を6月に行い、また来年3月には、宗教哲学会で、脳科学に関連したシンポジウムで司会を勤める予定である。「脳科学とキリスト教思想・宗教思想」について、共同研究の場で議論を行ってみたい。

2.日本・アジアのキリスト教と宗教的多元性
 (1)京都大学における演習(日本・アジアのキリスト教)
 この演習は、2005年度以来の植村正久を経て、2008年度から、波多野精一へとテーマを進めてきたが、2012年度で波多野との取り組みは一段落となり、2013年度から、無教会キリスト教へとテーマを移し、まず、内村鑑三の非戦論を取り上げた。内村鑑三の中心思想のうち、特に非戦論に焦点をあわせつつ、内村のキリスト教思想の特徴とその意義について議論を行う試みである。その際に、内村を、キリスト教思想史における戦争・平和論(絶対平和思想、正戦論、聖戦論の諸類型。19世紀以降の国民国家のなかでのキリスト教)の中に位置づけると共に、内村以降の矢内原忠雄、南原繁、政池仁ら無教会第二世代への思想展開に留意しつつ、内村自身の基本テキストの精読とそれに基づく思想分析がなされた。2015年度後期から、南原繁『国家と宗教』をテキストにしているが、今年度の前後期をつかって、全体を読み終える計画である。南原についての論文を執筆する予定である。

 (2)「アジア・キリスト教・多元性」研究会
 この研究会は、昨年度において、現代キリスト教思想研究会から独立し、新しいスタートを行った。会の名称も変更し、規約の改正などを含め、大きな転換が試みられた。月一回の研究会も、京都大学から同志社大学を経て、現在は、NCC宗教研究所を開場に行われている。NCC宗教研究所との関わり・提携を含めて、今後新しい研究会の構築を行って行きたい。わたくしは、この研究会に対して、研究プロジェクトの担当として関わることになる。しかし、『アジア・キリスト教・多元性』の刊行などの活動内容は、これまでの研究会の在り方が継承される。

 (3)出版に向けて
 昨年度末には、ここしばらく地道に作業を進めてきた、「日本キリスト教思想史研究」の出版(三恵社)が実現した。今年度も同様の企画で出版を行う予定である。昨年度のものを含め、三部作の形で研究をまとめる予定である。できれば、今年度中に2冊出版したいところであるが、どうなるだろうか。

3.近現代キリスト教思想研究
 (1)ティリッヒ研究
 「この10年あまりの間、『ティリッヒ研究』を中心に発表してきた論文を、一冊の論文集にまとめ、可能ならば、2010年度中に刊行したい。」と3年前の研究計画には書いたが、実現は、2011年度から2013年度にさらに延期された。「今年度こそはと考えている。また、この論文集をスタートして、研究書出版の新しい形に道をつけたい」というのは変わりないが、まだ具体的な展望はない。しかし、2013年度の演習でティリッヒを取りあげて以来、ティリッヒ演習は継続中であり、今年度は、1934/35年のユニオン神学校での講義「神学への現代的接近としての人間学」(ドイツ語)を読み進めている。
 また、昨年度の『キリスト教学研究室紀要』では、ティリッヒ歿後50年の特集を企画した。ティリッヒ研究についても、5年程度の範囲で出版を実現したい。

 (2)宗教哲学研究
 これまでそれぞれ別々に進めてきた議論を、「宗教哲学」として集約する方向で、新しい研究をスタートさせたい。具体的には、京都大学の特殊講義で、宗教哲学的テーマを取り上げることによって、考察を進めることになる。
 シュッラー編の論集の翻訳も、訳文の検討の段階に入り、夏には、かなりの論文について、訳文完成の見通しを立てたい。

 (3)現代キリスト教思想の動向
 今年度の10月より、『福音と世界』で、「現代キリスト教思想の動向」をテーマとした連載を担当する予定である。これまで、さまざまに取り組んできた諸問題について、もとまった全体像を描いてみたいと考えている。

4.「近代/ポスト近代とキリスト教」(寛容・対話・公共性)
 2013年度から始められた、特殊講義「キリスト教思想の新しい展開──自然・環境・経済・聖書」は、今年度前期で締めくくりとなる。もちろん、問われるべき問題が論じ尽くされたというわけではないが(その反対である)、この研究テーマに一つの区切りをつけて、次の展開を試みたい。

5.その他
 研究をとりまく状況は、必ずしも好転せず、なぜか、忙しさは増すばかりである。学会関連の仕事は以前ほどではないが(日本基督教学会の編集委員長の仕事は、5月からの学会誌の編集作業が中心となるが、これはほぼ山を越えた)、しかし、必ずしも視界は明るくない(思いがけず、仕事が増えそうな予感もある)。
 またこの数年かなりの時間と労力を使った組合関係の仕事は、なんとか区切りをつけることができそうである。少しは、余裕が生まれるだろうか。
 近年の傾向として、「京都大学キリスト教学専修では、大学院生が増えつつある。とくに、海外からの留学生はかなりの増加であり、そのための教育的配慮が求められるとともに、こうした状況を生かした研究プロジェクトを企画したいと考えている」。この状況についても、特に大きな変化はないが、2013年度から研究会と演習の中間形態として進めてきた「キリスト教思想研究の現在」は、2015年度から研究会に戻して行っており、今年度も同様である。2012年度から、始まった研究室の紀要、『キリスト教学研究室紀要』(電子ジャーナル)も、第4号が刊行された。
                

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